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私立有栖学園の校長・・・ローゼン、彼は変人でもあり奇人でもある、しかし彼の本当のやさしさを知る者は少ない 一方私立有栖学園の教師の一人水銀燈、彼女も悪く言えば変人でも奇人でもあるが、根は優しい先生である ○月×日 雨 水銀燈「なによぉ~・・・そんなに怒らなくてもいいじゃなぁ~い」 水銀燈の声が職員室に響き渡る・・・しかし 真紅「許すものですか!くんくん人形を返しなさい!」 翠星石「おめぇ~のした事は重罪ですぅ~、いい加減謝りやがれですぅ!」 蒼星石「悪いけど、今回は許しがたいな、僕の帽子弁償だけでは済まないよ?」 金糸雀「よくもカナのバイオリンを壊してくれたかしらー?」 雛苺「うにゅ~を返すのー!」 雪華綺晶「戦車を破壊して許されると思っているのか!」 この場に居る教師全員が敵であった・・・それもいつもなら仲介に出てくる蒼星石や揉み消してくれる雛苺に金糸雀まで そう、水銀燈は今完全に孤立していた・・・ 水銀燈「な・・なによぉ、皆して虐めなくてもいいじゃなぁ~い・・・」 若干反省したのかいつもの甘ったるい口調ではなく少々の怯えが混ざる しかし他の教師の猛攻は続き・・・・ 真紅「いい加減にしてよね?この脳みそジャンク!」 翠星石「食材を無駄にするなんて人間として風上にも置けないですぅ!」 蒼星石「悪いけど、これから友達関係見直させてもらうよ」 金糸雀「もう口利いてあげないのかしらー!」 雛苺「べ~~~~~っだぁ!」 雪華綺晶「ナチスを侮辱した事、悔い続けるがいい!」 ・・・・・ガタッ!全員が言い続けてると思いっきり席を立つ水銀燈 水銀燈「・・・・・・・・」 そして無言のまま職員室を出て階段を上がっていく、その目には確かに大粒の涙があった まだ階段を上がる、これより先は屋上である・・・・その時 薔薇水晶「あ、水銀燈先生おはようございます」 奥から歩いてきた薔薇水晶が挨拶をする 薔薇水晶「あのー、ここから先は屋上ですよ?」 いつもの元気がない水銀燈を心配する薔薇水晶、しかし水銀燈は無言のまま階段を上がる 薔薇水晶はそれ以上とめる事もなく頭に?を浮かべながら職員室へと向かった そして職員室に入ったが、そこはいつもの雰囲気ではなかった・・・そうなにかジメっとした感じが漂う陰気な空間であった 薔薇水晶「・・・・・・・・・ぉ・・・おはようございます・・・」 薔薇水晶がおどおどして入る、しかし挨拶は返ってこない・・・ いつもなら水銀燈の甘ったるい挨拶に始まって色々な挨拶が返ってくるがそれもない・・・そんな時 ガラッ!!!いましがた閉めたばかりのドアが開いた ローゼン「グッッッッ・・・・・・モォォォォォォニィィィィン!」 空気等まったく読まない奴が入ってきた・・・・ ローゼン「ん・・・ん・・・・?・・・・んんんんんん!?、どうしたんだい皆お通夜みたいな顔してぇ!ははぁん、さては僕が来たから照れてる?」 そんな事を一人浮かれて喋るローゼン・・・・そこで薔薇水晶が無言でローゼンの腕を掴み廊下へと引きずり出す そして廊下に出た二人・・・そんな中先に口をあけたのはローゼンだった ローゼン「水銀燈先生が居ませんでしたね、しかも皆さん暗い顔持ち・・・喧嘩でもしましたか?」 そこにはいつものローゼンとは打って変わって凛々しい男性のローゼンがあった そんなローゼンに一瞬見惚れた薔薇水晶だったが・・・ 薔薇水晶「・・・・水銀燈先生泣いてたの・・・なんでかは判らない・・・雨なのに屋上に行った・・・」 いつもよりはっきりとローゼンに話す薔薇水晶、そしてそれを聞き小声で「ありがとう、後は任せておきなさい」と言い階段を上がるローゼン 薔薇水晶は事態の内容すらわからなかったが、これで大丈夫だと確信した 一方屋上では水銀燈が雨の中屋上から校庭をただ一人見ていた 水銀燈(なんでこんなことになっちゃったんだろ・・・少しだけイタズラしただけなのに・・・) いつもの水銀燈ならこんなことは欠片も思わないだろうがこの時は違った・・・ ちょっと構って欲しい、ちょっと付き合って欲しい、ちょっと一緒に居て欲しい、これの延長線でイタズラの度が過ぎてしまっただけなのだが・・・ 水銀燈「・・・・皆に嫌われてるならいっそ・・・」 そう呟く水銀燈・・・・しかし ローゼン「いっそなんだい?そこから飛んで夢の彼方にでも行くつもりか~い」 等と緊張感の欠片も無い声が水銀燈に届き、その声の主に振り返る水銀燈 水銀燈「な・・・なによ!あんたなんか呼んでないんだからとっとと消えなさい!」 それに対し怒りをあらわにする水銀燈これに対して穏やかに答えるローゼン ローゼン「そうもいかないなー、だって僕校長だしー、それにお通夜みたいな職員室は耐えられないしね」 と、あっさりと切り返す 水銀燈「馬鹿いわないで頂戴、大体貴方みたいに何の考えも持たない人間が・・・」 そこまで言ってしまったと思った・・・ローゼンは自分を救いに来たのにそれをまた自分で手放したのだと自分を責める ローゼン「だねー、ほぉーんと考えもってないよー」 しかしそこには怒りや侮蔑の回答ではなく、いつものローゼンの回答があり・・・・次の瞬間彼の顔を見て世界が止まる ローゼン「でもね、僕は僕のやり方でだけど今の有栖学園が崩れないようにしたいんだ、もちろんそこには水銀燈先生の存在もあるよ」 口調はあくまでも穏やか・・・いやいつもみたく冗談等の意味が含まれない穏やかな声・・・・ ローゼン「君が何をしたか知らないけど、一度躓いたぐらいで飛び降りようとか考えるのは穏やかじゃないなぁ・・・」 変わらぬ口調、しかし最後の飛び降りようとの所には怒気が確かに含まれていた・・・ ローゼン「じゃぁ、僕はラプラスから逃げないといけないから戻るね♪」 そして戻るローゼン、そこにはいつもの・・・本当にいつものローゼンが居た 残った水銀燈は一人考えた・・・が、もう答えは決まっていた・・・ 泣いていたその顔は今ではすっきりとした顔に戻っている・・・ 水銀燈「ほぉ~んとに、私が居ないだけでお通夜とか・・・みんなおばかさぁ~ん・・・」 まだ涙声だが汚れの無い声で職員室に戻る水銀燈の姿があった・・・ いつの間にか雨は止んでいた fin
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それは遠い昔。まだ科学が発展してなく、天災は神々によって起こっているものと信じられていた時。 とてつもなく大きく、広い、海のような川があったとさ。 そこに近いある漁村で船の転覆事故が多発したために、ある少女が人身御供として出された。 少女は川に流され、ある島に流れ出た。 そこに住んでいたのは黒い着物を着崩した銀髪の美しい少女、名を水銀燈。 水銀燈は名前だけを思い出せないその少女を紅の着物を着ていたところから真紅と名付け二人で暮らしていくことになった。 そんな二人の楽しい生活が始まろうとしています。 ──にじりよる恋心 抜けるような青空と最初に形容したのは誰だったか。 正にその言葉がぴったりのある朝。真紅はゆっくりと目を開けた。 「朝御飯にするわよぉ」 川から流れてきたらしい魚を四匹抱えて来た水銀燈に起こされ、囲炉裏を囲む。 パチパチと火に焼かれた魚から食欲をくすぐる匂いが漂ってくる。 「はい、どーぞぉ」 「ありがとう」 塩で味つけられた串焼きの魚に一口かじりつく。 もうここに来て二週間。真紅はあることに気がついていた。 水銀燈はいつも真紅が起きる前に起きていて海から食べ物を持ってくるのである。 それは魚だったり海草だったり、時には野菜なんかも流れてくるというのだ。 別にそれだけならなんら疑問はないのだが、何故だか水銀燈は真紅を川に近づけようとはしない。 と言うより、そういう食べ物や他の必需品を持ってこようとする時、必ず水銀燈は一人で行くのだ。 「ねぇ、真紅。ほら、これ分かるぅ?」 「鞠……ね」 それは黄色地に赤や橙の牡丹の刺繍が入った綺麗な鞠だった。 「こんなものが流れてたんだけど、知ってるぅ?」 「水銀燈、知らないの?」 「えぇ」 なんか綺麗だから真紅が気に入るかなと思って。ニッと笑った水銀燈に真紅は正直、動揺が隠せなかった。 「これは、こうやってついて遊ぶのよ」 貸して。と言って、真紅は水銀燈から鞠を受け取った。 真紅は立ち上がると、唄を歌いながら鞠をテンテンとリズムよくついた。 かわむらのそばでみていたひゃくしょうが さかなをとってみたならば ぬぬっとしぶきをあげまして まっかなりゅうがおこりだす さかなをかえせ さかなをかえせ あわててさかなをかえしたら にっこりわらったせきりゅうが きんのひかりにつつまれて あっというまにきえたとさ 「へぇ、貸してぇ」 水銀燈は鞠を受けとると見よう見まねでテンテンと同じくつき始めた。 「歌、何だっけぇ?」 「もう一回歌うわよ?」 真紅がゆっくりとまた歌い出す。それに合わせて水銀燈が鞠をつく。 それにしても何故、水銀燈は鞠を知らなかったのだろうか。 水銀燈は自分の年齢は分からないと言った。しかし、見た目から言えば真紅よりも二つ三つ上に見えた。 「もう一回歌ってぇ」 「ええ! また?」 「お願いぃ!」 はぁ、と真紅はため息をついて再び歌い出した。 村にいた頃は、鞠つきで遊ぶのは幼子だけで、真紅はとうに遊ぶのをやめたと言うのに。 水銀燈はまだまだ楽しそうに鞠をテンテンとついている。 そうやって飽きるまで水銀燈に付き合っていると、既に日は暮れ、月が昇ろうとしていた。 「ねぇ、その唄どういう意味なのぉ?」 「意味って……知らないわ。私も姉と兄から教えてもらったもの」 「ふぅん」 水銀燈は真紅の膝の上で気持ち良さそうに髪をすいてもらっている。 何故か、彼女は一緒に暮らし始めてから、真紅の膝の上がお気に入りなのだ。 まぁ、これまで一人きりで暮らしてきたというのだからその寂しさの反動かもしれない。 「ねぇ、真紅。私ね、すっごい幸せよぉ」 笑顔で彼女を見上げた水銀燈は彼女の金糸をサラサラと撫でた。 「貴女がいて、とても嬉しいのぉ」 真紅の頬にペタリと触れた水銀燈の手はするすると唇まで滑る。 「大好きよぉ、真紅」 「すいぎ、……」 真紅の紡ごうとした名前は水銀燈の唇に寄って塞がれた。 「逃げないのぉ?」 確かに。普通ならば会って二週間足らずの同性の少女に。でも、何故か逃げる気にはならない。 「ふふ、真っ赤ぁ」 ぷに、と水銀燈の指がその名の通り真紅色に染まった頬を突いた。 「私も、大好き……よ」 口を開くとこんな言葉がスルッと出てしまった。 「一人だったのは、私も一緒」 ポツリポツリと真紅が言葉を紡ぐ。 心優しい姉も、力強い兄もいた。けれど、所詮はただの他人で。 村人からは蔑まれ、疎まれ、嫌われ、私は一生こうやって生きて、そして死ぬんだと思っていた。 「だけど、水銀燈。貴女に会えた……!」 「真紅ぅ……」 起き上がった水銀燈が真紅を優しく包み込んだ。 初めて本当の人の温もりを感じた真紅はぼろぼろと涙を溢しながら、水銀燈の胸元を掴んだ。 「辛かったのね、真紅。ねぇ、聞かせてくれなぁい? 真紅に何があったか」 ぐ、と唇を強く噛んだ真紅は水銀燈の胸に顔を埋めながらゆっくりと話し始めた。 自分には家族がいないこと。姉と兄に拾ってもらったこと。漁村に住んでいたこと。 そこで嫌われて蔑まれたこと。自分を嘲った人達が次々死んでいったこと。 そして、それは自分が悪いんだということ。 「私じゃないのに。私は、何も知らないのに……」 「大丈夫。大丈夫よぉ、真紅」 喚く真紅の頭を安心させるように、水銀燈は暖かい手で撫でた。 「ねぇ、真紅。こんな風に考えられなぁい?」 真紅は、神様に愛された子なのよぉ。 「は?」 「だからぁ、真紅をバカにした人達を見た神様が罰を与えたのぉ」 ニッと自信ありげに笑った水銀燈に思わず目を丸くしてしまった。 「それで人の命を奪う神様も神様だけどぉ、そんな村で暮らすより私とのこの暮らしの方がいいと思うでしょう?」 「まぁ、そうだけど……」 「そういうことよぉ!」 元気を出させるように背中を軽くポンと一つ叩くと、水銀燈は再び鞠を取り出した。 「ま、また!?」 「えー、だって楽しかったんだものぉ」 呆れながらもお願いされたら断れなくて、真紅は再び歌い始めた。 「ねぇ、水銀燈」 「ん?」 「私、少しは村の人達を恨んでもいいのかしら」 「当たり前じゃなぁい。むしろ、恨んでない方が変なくらいよぉ」 「そう、……そうよね」 かわむらのそばでみていたひゃくしょうが さかなをとってみたならば ぬぬっとしぶきをあげまして まっかなりゅうがおこりだす さかなをかえせ さかなをかえせ あわててさかなをかえしたら にっこりわらったせきりゅうが きんのひかりにつつまれて あっというまにきえたとさ 唄に合わせた水銀燈の鞠の音が、外を包む闇に消えていった。 続く 名前 コメント
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前ページ次ページゼロのミーディアム 「貴族の食卓を荒らす訳にもいくまい。ヴェストリの広場で待っている」 そう言い残しギーシュは去っていった シエスタがぶるぶる震え青ざめた表情で水銀燈を見つめている 「水銀燈…貴族をあんなに怒らせるなんて…おまけに決闘だなんて!」 「ふん…問題ないわよ。あんなボンボンのお坊ちゃんにこの私が遅れをとるとでも?」 そこに駆けつけてくるルイズ。どうやら事の一部始終を見ていたらしい 「ちょっとあんた!何してんのよ!」 「あら、お嬢様。ご機嫌いかが?」 「ご機嫌いかがじゃないわよ!決闘なんか勝手に受けちゃって!」 「あんな醜態をさらしたくせにおこがましくも薔薇を名乗るなんて気に入らないのよ。ましてやそれを私のせいにするなんて。それに…」 (それにあの人間はこの私の最も嫌う言葉を私に投げかけた。だから…許す訳にはいかない…!) 瞳を細め苦々しく心の内で呟く 『ジャンク』・『できそこない』水銀燈の最も嫌う…嫌悪すると言ってもいい言葉だ 前にも述べたがルイズに対するの『ゼロ』に匹敵する侮辱の言葉と言える ギーシュは彼女の前では決して言ってはならぬ禁句を言ってしまった この尋常ではない怒りは無論これによる物。今の彼女の心の中はそれ一色しかない いや、水銀燈の中にはもう一つそれとは少し違う感情があった あの時ギーシュの言った『できそこない』の対象は水銀燈だけではない。彼女のミーディアムたるルイズも含まれていた。彼女の仇名である『ゼロ』のオマケ付きで そのことが何故か水銀燈はひどく気に入らなかった 無意識の内にルイズの境遇の中に自分を垣間見たのかもしれない 誰かのために戦うなど自分の性に合わないと思う だからあくまで自分の名誉を守るついでにルイズの名誉を守ると理由付けて決闘を受けた だがルイズは水銀燈の胸中など知る由もない 「謝っちゃいなさいよ」 「謝るですって?断るわね」 「悪いことは言わないから!あんたが少しは不思議な力が使えるとしても、メイジには絶対勝てないの!」 「何よ、貴女心配してくれてるの?」 「べ、別に心配なんか…いや、それは…あんた一応私の使い魔なんだし…」 一人で勝手にしどろもどろしているルイズをよそに水銀燈はギーシュの連れに決闘の場を問いただす 「ヴェストリの広場だったかしら?それってどこなのよ?」 「ああ、こっちだ」 恐怖に震えるシエスタとなんだが一人ブツブツ言っているルイズに背を向け貴族に連れられ水銀燈は決戦場へと向かう 「水銀燈…」 シエスタはそのまま立ち尽くしその場から動くことができなかった そしてこちらははっと我に返ったルイズ 「ああ!待ちなさい!もう!使い魔のくせに勝手なことを~!」 小さくなっていく水銀燈の後姿をルイズは文句を言いながらを追いかけた 学院内の『風』と『火』の塔の間にあるヴェストリの広場。大きく場所の開けた中庭はまさに決戦場としては最適だと言える この短時間にどう聞きつけたか分からないがすでに広場では見物人が溢れかえっていた 「来たぞ!ルイズの使い魔だ!」 生徒達の一角から声が上がる 「――来たか」 腕組みした手に薔薇を模した杖を持ち静かに呟くギーシュ。一見冷静だが内心腸が煮えくりかえっていることだろう その視線の先に―― 漆黒の翼をはためかせ広場に入ってくる黒衣の少女 「――待たせたわね」 紫色の鋭い双眸でギーシュを睨みつける少女…水銀燈 広場の中央、険しい面持ちで対峙する両者。共に自分の信念とも言える物をを侮辱され、平和的解決などは有り得ない 「ちゃんと逃げずに来たようだね」 「貴方ごときに何故逃げる必要があるのかしら?」 ギーシュは水銀燈の挑発を聞き不機嫌にぴくりと眉を動かす。 「その減らず口がいつまでも叩けるか見ものだな」 そしてギーシュは杖を掲げ高らかに名乗りをあげた 「我が名はギーシュ!人呼んで『青銅』のギーシュ!我が前に立ちはだかりしルイズの使い魔よ、名乗られよ!」 そして頭上に掲げた薔薇を決闘相手に向けた 何処からともなく水銀燈の手に羽が集まり黒い薔薇を作り上げる そして水銀燈も薔薇を横に振り名乗りを上げた 「私は誇り高きローゼンメイデンの長女。第1ドール、水銀燈…!」 「ローゼンメイデン…薔薇乙女とは言ったものだな。ならばどちらが薔薇の名に相応しいかこの決闘で決めようじゃないか!」 「誇り高き薔薇の名…貴方にはすぎたものだわ」 そして水銀燈は手にした薔薇を放り投げる。決闘開始の合図はその薔薇が地についた瞬間 誰が決めた訳でもない。だが二人にはすでにそう言う認識だった。 文字通り暗黙の了解と言うものなのだろう 両者は薔薇がゆっくりとスローモーションのように落ちるよう感じた。 そしてそれがが地についた瞬間…! ギーシュは薔薇の杖を振り下ろし、水銀燈は背の翼を大きく広げる ――決戦の火蓋は切って落とされた 先手必勝と言わんばかりに水銀燈の翼から無数の羽が発射される まるでダーツを思わせるように発射されたそれは真っ直ぐにギーシュへと向かっていった。 しかしそれはギーシュに当たること無く彼の前方に現れた『何か』に阻まれた 「これは…!」 ギーシュの前に現れ羽の鏃(やじり)を阻んだのは甲冑を纏った女性型の騎士 ギーシュの薔薇…薔薇の形をした杖から放たれた一枚の花びらが変わったものだ 「言っておくが僕はメイジだ。だから魔法で戦う。故に…君の相手は僕の生み出した青銅のゴーレム、『ワルキューレ』がお相手しよう!」 「ちいっ!」 舌打ちしなおも漆黒の鏃を放つ水銀燈 だがそのゴーレム、ワルキューレは気にもかけずこちらへ突進をかける 黒い嵐を平然と突破し右拳を突き出すワルキューレ 金属的に強度の低い青銅と言えど金属には違いない 当たれば並みの戦士でも卒倒しかねない一撃、 ましてや水銀燈は人間よりも非力な人形。当たればそれだけで致命的である 「くっ…」 それでも水銀燈は翼をたたみ紙一重で横に避ける 流石はアリスゲームを生き残るだけのことはあると言えるだろう ローゼンメイデンとして姉妹で戦う宿命に生まれた彼女は戦闘経験も決して少なく無い だがワルキューレはなめらかな動作で水銀燈の向き直ると追い込むように左右の拳を連続で拳を突き出す そこまでの速さでは無い。冷静に見切れば避けきることも可能。だが… 「どうしたんだい?逃げているだけでは僕には勝てないぞ!」 その通りだ。どんなに攻撃を避けようともこちらから攻撃に転じなければ水銀燈の勝利は無い しかし相手は青銅の塊。彼女の持つ攻撃手段による破壊は限られている。 攻撃に転ずるならら彼女最大の攻撃をぶつけるしかない 「ならば…!」 翼を広げ後方へと飛びワルキューレと距離を大きく離す水銀燈。これにはワルキューレの追撃は間に合わないらしい 素早さはこの戦いで水銀燈の数少ないアドバンテージと言えた 間髪入れずワルキューレが迫ってくるが水銀燈はそれすら無視し力を背中の片翼へと集中させる。 ――イメージは…全てを噛み砕く黒竜のアギト そしてワルキューレが彼女の間合いに入った瞬間一気に力を爆発させた! その片翼が大きく逆立つと、拳を振り上げ殴りかからんとするワルキューレに食らいつく! 「なんだと…!」 突然水銀燈の背から現れた漆黒の竜にギーシュも目を見張る 黒竜のアギトと化した翼はワルキューレを噛み砕くことは出来なかったものの、それに食らいついたまま広場にある木に激しく叩きつけた 大木を揺るがし広場に大きく響く激突の轟音 さすがのワルキューレもその青銅の身体がひしゃげ、動かなくなると光の粒子となって消滅した (やったわ…) 息切れをおこしながら水銀燈は内心で安堵した 消耗が激しく連発は出来ない上に、足を止め力を撃たねばならねリスクの高い彼女最大の武器 だがその一撃は見事青銅のワルキューレを撃退したのだ 周りの貴族も大騒ぎだ 「やりやがった!」 「やるもんだな!ギーシュのあれを破るとは!」 しかし当のギーシュは全く持って余裕の表情 「フッ…見事だよ。僕のワルキューレを破るとはね」 「…おとなしく降参なさい。そんな玩具じゃ私は倒せないわ」 強気の発言だが先程の攻撃による水銀燈の消耗は決して少なくない。苦しげに語る様がそれを証明している 「フ…馬鹿を言っちゃいけないな」 ギーシュはあくまで余裕の態度を崩さない その自信に水銀燈に嫌な予感がよぎる… 「いやいや、すまなかった。考えてみれば麗しきレディとは言え我が決闘相手には違いない。手加減等するのは失礼だったな」 「手加減…なんですって?」 ギーシュが再度杖を振り、花びらが七枚地に落ちた 「言い忘れたが僕が錬金できるワルキューレは一体だけでは無いのだよ」 彼の言葉通り七枚の花びらが光を放ち人型のシルエットとなる しかも…今度のワルキューレは各々の手に多数の武器を持っていた これには流石の水銀燈も絶句するしかなかった (厄介な事になってきたわね…!) 「本気で行かせてもらうとしよう。かかれッ!ワルキューレ!」 ギーシュは薔薇を水銀燈に向けワルキューレをけしかける 突撃用のランスを突き出し迫り来るワルキューレが二体。長剣を携え後に続くワルキューレが三体 そしてギーシュの前方に立ち塞がり長剣と大盾を構えたワルキューレが二体 先頭のワルキューレが加速を付けその槍先で水銀燈を貫こうとする 辛くも一体目の突撃を身をひねりそれを避けた。その横を勢いも殺さず駆け抜けるワルキューレに水銀燈も背筋が凍る しかしすかさず二体目のランスが追撃をかける 「くっ!」 一体目を回避し態勢の崩れた水銀燈に迫り来る二本目の槍先。翼を大きく反対に振り重心を移動させ回避を試みる 先程まで自分がいた場所に槍が突き出され空を切った。こんな物を食らってしまえばひとたまりもない どうにか槍は避けられたもののワルキューレの猛烈な突進が水銀燈をかすめた だが…かすっただけなのに彼女の体に凄まじい衝撃が走る 「ぐうっ…」と呻き痛みに堪えるも肩を押さえ屈み込んでしまう水銀燈 だが敵は待ってくれない。この隙を逃さず頭上に剣を振り上げた三体目のワルキューレが切り込んだ。その剣が振り下ろされようとしている 水銀燈はとっさに羽を右手に集め自分の右手に剣を形成させる。ワルキューレの斬撃を受けとめるためだ だがいかせん分が悪い。非力な人形たる彼女ではワルキューレの重い一撃は受けきれないだろう 彼女は状況判断を誤った。しかし今の彼女にできる抵抗はこれいしかなかったのも事実 (しまっ…!) しまった!と言い終える前にワルキューレの剣が無情にも振り下ろされた 決闘を止めようと人混みをかき分けやっとのことで二人の決闘の見える位置まできたルイズ だがその目に写るのは今まさにワルキューレの刃が水銀燈に振り下ろされると瞬間 ルイズは思わず目を覆ってしまった ガキィィィィン! 金属同士のぶつかり合う音が響く (え…?) 水銀燈は何が起こったのかわからなかった …振り下ろされた剣はなんと自分の両手の細腕に握られた剣で止められていたのだ。自分自身も信じられなかった それだけでは無い。 体の奥底から力がわいてくるような不思議な感覚 水銀燈の剣を持った右手には契約時に刻まれたルーンがまばゆく輝いていた ワルキューレの重い剣を自らの剣で受け止めた水銀燈 彼女の細腕にはそれ程までの力は無い筈だ 変わったことと言えば左手に輝くルーン。とっさに剣を握った瞬間に光り出したものだ どうにか一命はとりとめた 疑問は尽きないところだが今は目の前のワルキューレに集中する 鍔迫り合いの形となり、力は均衡し両者とも剣は動かない 水銀燈は急に力を抜きワルキューレの側面に回り込む。 突然の脱力により勢いを止められず前に崩れるワルキューレ 水銀燈はその勢いを剣に乗せ体を回転させつつ遠心力をのせた斬撃をワルキューレの右手に叩き込んだ 宙に舞う剣を持ったワルキューレの腕。すかさずそのまま脳天から叩き斬ろうとするが… 水銀燈の背後に感じる殺気、ルーンにより感覚も研ぎ澄まされているらしい。後ろも振り返らずに宙返りし、背後から襲いかかってきた四体目のワルキューレの頭を飛び越える 水銀燈を狙ったはずの横薙に薙払われた四体目の斬撃が右手を飛ばされた三体目のワルキューレに襲いかかった 青銅同士のかち合う耳障りな音とともに刃は三体目を切り裂きそれを消滅させた その隙に四体目の頭上背後に回り込んだ水銀燈も天高く剣をかかげその脳天に振り下ろす 再び鳴り響く金属のかち合う音 しかし…水銀燈の渾身の一撃を食らったはずのワルキューレの頭は少し頭を切り裂かれただけ 「そんな…!」 水銀燈は驚愕の表情を浮かべる ワルキューレの剣を受け止め、青銅の塊であるその腕を切り裂いた彼女の剣はそれで限界が来ていたのだ。ルーンの強化は武器にまでは及ばなかったらしい 宙を舞う金属の破片…水銀燈の持つ剣が…澄んだ音と共に砕け散った… 水銀燈の意識が折れた剣に奪われた時間は一秒にも満たない。が、ワルキューレが体勢を立て直すには十分だった 振り向き様に放たれるワルキューレの袈裟懸けの刃。意識をそちらに向けた時にはもう遅い とっさに翼前面に展開し盾にするが…それでも大きく吹き飛ばされ地面に叩きつけられる水銀燈。それも頭から落下する危険な落ち方だ 「ぐうっっ!」 苦しそうに呻く水銀燈を目の当たりにし、ルイズが駆け出した 「もういいじゃない!メイジ相手にあんたは十分やったわ!だからもうやめて!」 「断るわ…!例えこの身が朽ちようとも…あの人間を許す訳に行かない… この私を…そして『貴女』を『できそこない』なんて…言わせない…!」 「え…?」 「邪魔よ!どきなさい!」 水銀燈はフラフラと立ち上がり駆け寄ったルイズの手を振り切りギーシュへと向かっていく たった一撃食らっただけ。それなのに彼女の受けたダメージは深刻だった (あの娘が決闘を受けた理由…まさか私の為に…?) 水銀燈の背を見つめルイズは思う そう問えば水銀燈は頑なに否定するに違いない。 だが決闘の半分の理由はまさしくそれだった。今の『貴女を』と言う言葉は無意識に漏れたものだ 水銀燈は…自分自身とルイズの誇りの為に戦っている 左手のルーンの輝きも失せ、体は満身創痍。それでも彼女は戦うことを止めない 水銀燈はワルキューレを無視しその操手たるギーシュ本人を狙うが… その行く手を阻むランスと剣を持ったワルキューレが二体ずつ 「破れかぶれで僕自身を狙うつもりかい?無駄なことを!」 仮にこれを凌げてもギーシュの前には盾を構えたワルキューレが二体。勝つのはもはや絶望的だ そして決闘開始時の水銀燈の素早さは見る影もない ギーシュは四体のワルキューレで水銀燈を囲んだ 「最後のチャンスだ。もし君が今僕に謝罪すればこれで手打ちにしよう!続けるならそれ相応の覚悟をしてもらうがね!」 武器を構えジリジリとワルキューレが迫る 「謝罪ですって…?」 「そうさ!『私のせいで2人のレディの名誉を汚してしまい申し訳ありませんでした。薔薇の名は貴方にこそ相応しい!』そう言えば君を許そうじゃないか!」 断れば即座にワルキューレの武器が水銀燈を貫くことだろう この上なく危機的状況。それでも彼女は退かない 「死んでも…嫌…!!」 苦しい表情に不敵な笑みを浮かべ言った 「ならば…望み通り死なせてやろう!やれ!ワルキューレ」 ギーシュの命により剣が、ランスが、一糸乱れずに振り下ろされる 「くっ!」 痛む体に鞭打って翼を羽ばたかせ上空へと逃れる水銀燈。四方を囲まれた今逃げ道は上方のみ しかしそれはギーシュの思考の予測範囲 「なかなか頑張るじゃないか!だが甘い!」 ギーシュはワルキューレを下がらせると短くルーンを唱え、大地に向けた杖を振り上げた 次の瞬間、水銀燈が立っていた地面が隆起し槍の先のような岩がまるで高射砲のように放たれる ワルキューレの猛攻を凌ぎ多少安堵していた水銀燈に襲いかかる対空放火 「く…ああっ!」 何発もの岩の穂先に突き上げられ再び墜落し地面に叩きつけられた そしてベキッ!と言う何かが折れるよな嫌な音 彼女の象徴にして戦いの生命線たる黒い片翼があらぬ方向に曲がっていた… 勝敗はついたも同然と言える。しかしギーシュは決闘を止める気はないらしい 「降参しろと言っても無駄なのだろうね?すぐに楽にしてやろう!」 かろうじて水銀燈は意識を保っているがもはや体は死に体、それでも立ち上がろうとする そこに割り込んでくる人影 ワルキューレから水銀燈を庇うように両手を広げ立ちふさがったのは鳶色の瞳を潤ませたルイズ 「何のつもりだい?ルイズ。神聖な決闘に割って入るとは!」 泣き出しそうなのを我慢してルイズは言った 「もう勝敗は決したわ。だからお願い、この子を、水銀燈を許して」 「断る。君の使い魔から受けた数々の無礼、許し難い。彼女から謝罪の言葉でもでれば別だがね」 ルイズは瞳を閉じ少し間をあけるとギーシュに悔しげに告げた 「わかったわ…この子が謝らないなら…つ、使い魔の主人たる私が…しゃ、謝罪するわよ…」 「ルイズッ!止めなさい!!」 水銀燈が声を荒げる 「あんたは黙ってなさい!水銀燈!」 ルイズも俯き声を荒げた。地面には彼女の涙がポタポタと落ちている それでも水銀燈は言った 「いいえ!言わせてもらうわね!ルイズ、貴女がやろうとしていることは私、そして他ならぬ貴女自身を侮辱していることも同然!」 「で、でも!」 「貴女は認めるの…?自分が『できそこない』だと、自分が『ゼロ』だと!」 「そ、それは…」 (自分だってそんなこと認めたくない。だがここで止めなければ水銀燈が…) 「認めたくないのね?そう、それでいいのよ。仕方がない?そうしなきゃ私が助からない?そんな理由で頭を下げる必要など無いわ! 貴女は誇り高き私のミーディアム、自分自身の誇りを裏切る真似等許さないわ!」 本当は止めなきゃいけないのに…不本意でも謝らなければならないのに… ルイズはそう思いつつも水銀燈の強い眼差しを受け何も言えなくなった それを見ていたギーシュは苛立ちながら告げた 「下がりたまえルイズ!もはや君にできることなど何もないのだからな!」 ルイズの心に突き刺さる心無い言葉 しかし水銀燈はふと何かを思い出したように言った 「いや…あるわ…!ルイズ。貴女にできることが…」 「わ…私にできること…?」 「覚えてるかしら…?契約した夜に言ったことを。貴女のミーディアムとしての力、使わせてもらうわ!」 その瞬間、ルイズの右手にした薔薇の指輪が熱を帯び眩く輝き出し水銀燈の体から光が溢れる。 あまりの眩しさにギーシュが、見物人達が目を覆う その光がおさまり中から現れた水銀燈は土にまみれていたドレスは埃一つなく折れた翼も修復され、傷や失った体力も完全に回復されていた そして凛とした態度でギーシュ、ワルキューレを見据える 「――刮目なさい。ローゼンメイデンの…真の力を!」 完全に復活をなし遂げた水銀燈が高らかに告げた 「何度やっても無駄だ!」 ギーシュは剣を持ったワルキューレをけしかけた 水銀燈は修復された黒き翼を広げそこから再び無数の羽を飛ばす 「今更そんな物を!そんな物が僕のワルキューレに効くものか」 しかしギーシュは即その認識を改めることになる 脆弱な筈の彼女の羽、それがワルキューレをいとも簡単に射抜いた 「え?」 予想外の事態に唖然とするギーシュ ワルキューレは漆黒の矢…否、漆黒の弾丸と化し羽による黒い嵐に蹂躙され為す術もなく破壊されていく 文字通り蜂の巣となった二体のワルキューレはガタッと膝をつき前のめりに倒れた 「くっ…!ひ、怯むな!かかれぇ!」 ギーシュは今度はランスを携えた二体を向かわせる 迎え撃つ水銀燈。彼女の右手に再び羽が集約し剣を形成。そしてルーンもまた輝き出す 一列に並んで突進してくるワルキューレ。しかしそれが加速に入る前に一瞬でその間合いに踏み込んだ 体が羽のように…いや風のように錯覚した。そして腰だめに構えた剣をすれ違い様に一閃! 突進を始めた筈のワルキューレがピタリと止る。剣を振り抜いた水銀燈はギーシュの方を見やりその剣を彼に突きつける 「闘いは…これからよ!」 水銀燈の背後でズッ…という音と共にワルキューレの上半身がずれて地面に落ちた 突然凄まじいまでの力を発揮しゴーレムを一瞬で蹂躙した水銀燈にギーシュはパニックをおこす 「うわあああ!行け!お前達も行くんだよ!!」 自分の守りに付けていた二体を外し、けしかける 盾を掲げ分厚い防御を維持したまま突進してくるワルキューレに水銀燈は一瞬で接近し一体を斬りつけた 堅固な盾を物ともせず肩から胴まで刃を切り込ませる が、そこで刃が止まった。切り裂かれたワルキューレが水銀燈の手をがっちりと固定し体をはって動きを封じる 「かかったな!そっちはフェイクだ!本命は後ろさ!ワルキューレごと切り裂いてやる!」 パニックを起こしても考えてるところは考えてるらしい その言葉通り押さえられた水銀燈の背後からワルキューレの片割れが襲いかかった しかし、水銀燈は「フッ…」と笑みを浮かべ翼の片方を逆立てる 再び彼女の背に現れる翼の黒竜。だがそれは一瞬で形成され背後のワルキューレにそのアギトを開いた ガチン!と言う音と共に顎が閉じワルキューレの上半身をかっ攫う 半身を食いちぎられたそれ下半身だけで力無く後ずさりし、バタリと倒れ動かなくなった 水銀燈は押さえつけていたワルキューレも力任せに真っ二つに切り捨てると服についた埃をパンパンと払った 「ばかな…僕のワルキューレが…ぜ、全滅!?」 ギーシュは目を大きく見開き恐怖にうち震える 「――貴方自慢の手駒は葬り去ったわ。…さあ、覚悟はよろしいかしら?」 水銀燈が冷たく言い放つ ギーシュは震えながらも、も杖を手離さなかった。貴族としての意地か、恐怖で離せないだけか ゴーレムの錬金は間に合わない。ワルキューレが錬成されている間にギーシュは一瞬で水銀燈に真っ二つにされるだろう。 自分だけの力でこの化け物と戦わなければならない…ダラダラと冷や汗を流しギーシュは思った。それでも―― 「今更あとに退けるかぁぁぁぁぁ!」 絶叫しルーンを唱え大地を隆起させるとそこから岩石を水銀燈に打ち出した 岩石は水銀燈を射抜き…いや射抜いたと思った瞬間に彼女の体が霧散した 「残念、残像なの」 ギーシュの足元からする声。水銀燈は地面すれすれにギーシュに切り込み翼で足を払う ギーシュは転倒しつつも杖を離さず水銀燈に杖を向け魔法を放とうとするが… 彼の闘志もそこまでだった。水銀燈は杖を斬り払うと返す刀をギーシュの喉元に突きつける 「チェックメイト…!」 ギーシュの見上げた先には冷たい笑みを浮かべ自分を見下ろす水銀燈の顔 「ま…参った!」 ギーシュは顔を青ざめさせそう言うことしかできなかった ギーシュの敗北宣言を聞き周りから歓声があがる しかし…水銀燈はギーシュの喉元から剣を動かさない。冷や汗をかきつつギーシュが不穏に思っていると水銀燈が口を開いた 「貴方…黒薔薇の花言葉をご存知かしら?」 突然の意味の分からぬ質問。何も言わないギーシュに構わず水銀燈は続ける 「黒薔薇の花言葉に決まったものは無いの…でも、私が知ってるのはこの二つね」 そしてその顔に狂気とも言える笑みを浮かべ言い放つ 「『あなたを一生許さない』・『彼の者に永遠の死を』」 「あ…あ…」 ギーシュの膝がガクガクと笑い腰が抜ける (殺される…嫌だ…死にたくない!)そうは思っても体が動かない 自分の使い魔の勝利に安堵していたものの、水銀燈の物騒な物言いにルイズがすかさず待ったをかける 「水銀燈!駄目よ!殺しちゃ駄目!」 止めに入ったルイズのまだ涙に濡れた瞳を水銀燈は剣をギーシュから離さず見据える。そして一つため息をついた 「ふぅ…冗談よ。命まではとらないわ」 ギーシュからようやく安堵の吐息が漏れた 「ただし、決闘のけじめとして私の言うことを聞いてもらうわよ」 「あ、ああ…勿論だよ…」 ギーシュはどんな無理難題を言われるか分からないが殺されるよりマシだと結論づけて承諾した 「さっき言った『できそこない』と言うのを訂正なさい」 「…はい?」 ギーシュは彼女の言ってることがイマイチ理解出来なかった 「そ、そんな事でいいのかい…?」 「そんな事って何よ、私にとっては大きな問題よ」 ギロリとにらむ水銀燈に慌ててギーシュは要求をのんだ 「あ、ああ!申し訳ない!先程の『できそこない』と言う言葉は訂正させてもらうよ!君こそが気高い薔薇として相応しい!!」 「一言余計だけどまあいいわ…でももう一人忘れてないかしら?」 ルイズに目配せして言う水銀燈 「ル、ルイズ!少々気が立ってたんだ!思わず君を『できそこない』呼ばわりしてすまなかった!今後二度と『ゼロ』等とも呼ばないよ!」 「あ、いや、私は別にそんなには…」 少々ばつが悪そうにルイズは呟いた だが水銀燈はこれで満足したらしい 「結構。あと、これはお節介だけど貴方を離れた二人にも謝罪するのね。貴方のせいであの二人の面目も丸つぶれよ」 「あ、ああ…冷静に考えれば僕の方が悪いね…」 今更だがギーシュは反省しだす 「自らの非を認めるのも紳士の勤めよ。薔薇を名乗るならもっと精進なさい」 水銀燈は踵を返す 「行きましょ、ルイズ」 そして広場を去っていった 「あ!水銀燈!待ちなさいよ!」 慌ててルイズは後を追った 「見たかね?ミスタ・コルベール」 「ええ…」 オスマン氏とコルベールで「遠見の鏡」により決闘の一部始終を見ていた 「よもや『ガンダールヴ』に関する報告を聞いた矢先にその力を見ることになろうとはな…」 「ええ…しかしもう一つ、あの後さらにあの人形から不思議な力が…」 「ふむ、あの使い魔、謎が多すぎるのう…あの人形何者なのじゃろうか?」 「『ディテクト・マジック』の反応ではUnknownとしか出ませんでしたが…」 「『誰とも知れぬ者』か…ますます分からんもんじゃな…ミスタ・コルベール。この一件はわしが全て預かる。無論王室にも他言は無用じゃ」 「こんな人形を耳にすれば王室はのどから手がでる程欲しがることでしょうな…かしこまりました」 部屋への帰り道にルイズは水銀燈に聞いた 「ねぇ…なんであんなにボロボロになるまで戦えるのよ?」 「決まってるじゃないの。誰だって心の内に一つくらい絶対に譲れないことがあるのよ」 「それがあの『できそこない』扱いされたこと?それって命までかけるようなことなの?」 「だから絶対に譲れないってことなのよ、命を賭けてでも自分の誇りは偽らない。それが私が薔薇乙女として生まれた定めよ」 ルイズは誇らしげに言う水銀燈に本当の貴族としてのあり方を見た気がした 「あんた言ったわよね…?私の誇りの為にも戦ってるって、あの戦いは私のためでもあったの?」 「!!そ、それは…」 水銀燈は口ごもった あの時思わず漏れてしまった言葉 「それは、つ、ついでよ!私の誇りを守る為のほんの気まぐれよぉ!」 水銀燈は本当は本心で漏らしたことだがそうだとは言えなかった 「んな…!」 ついで扱いされてちょっと腹が立つルイズ 「貴方こそ、私の危機に泣きながら謝ろうとしたわよねぇ?何?そんなに私のことが気になったのかしらぁ?」 いつもの調子を取り戻し水銀燈が茶化す 「か…勘違いしないでよね!べ、別にあんたがどうなろうと知らないけど。世話係が居なくなるとふ、不便になるじゃないのよ!」 こちらも純粋に水銀燈の身を案じて謝罪しようとしたのに思わず憎まれ口を叩くルイズ 「何よそれぇ!私を使用人扱いにしかてないってことぉ?」 水銀燈もその物言いに不平を漏らす 「そ、そうに決まってるわよ!あんたなんか私にとってそんな認識なんだから!…で、でも今日の活躍に免じてご飯抜きは撤回してあげなくもないわ!」 「ふ…ふん結構よぉ!こっちだってあんな傲慢知己な貴族なんかに囲まれて食事するなんて御免よ!またあんな事に巻き込まれるかもしれないし! でも…でも貴女がどうしてもと言うならついて行ってあげなくもないわぁ!」 …このツンデレどもが ああだこうだ言い合いを繰り返す二人。息が続かなくなるまでその応酬が続いた。双方息をぜぇぜぇさせて言葉が続かなくなる そしてルイズが突然真面目に告げた 「でも約束して…もう二度とこんな無茶な決闘は受けないって」 「何よ。唐突に」 「黒薔薇の花言葉、私も一つだけ知ってるわ…」 「…聞かせてもらおうかしら」 「それはね…『貴女はずっと私のもの…』…勝手にどっか行っちゃったりしたら許さないんだから…」 ルイズは恥ずかしそうに言った 水銀燈は並んで歩くルイズを追い越し、彼女に顔だけ振り向けて言った 「ま、善処してあげるわ」 その顔は裏表の無い純粋な微笑みを浮かべていた 今更だが…決闘中に初めて互いの名前を呼びあった二人の少女 これはほんの少しだが二人の距離が近づいた証なのかもしれない 前ページ次ページゼロのミーディアム
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790 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/01/02(水) 01 47 05 「おはよう、水銀燈」 それは、全く意識せずに、口から勝手に出てきた言葉だった。 けど、口にしてから気がついた。 ……ああ、俺はこの言葉を言ってあげたくて、いままでやってきたんだな。 水銀燈はというと、目の前に俺が居ることが不思議でしょうがない、と言いたそうな顔で俺のことを見返している。 「おはよう、って……なんで士郎が……? だって私、さっきまで……はっ!?」 そこまで言いかけて、突如水銀燈の両目が大きく見開かれる。 みるみるうちに顔がこわばっていくのが見て取れる。 どうしたんだ……この様子は尋常じゃないぞ。 「士郎、敵は!? あいつらは何処にいったの……あっ!?」 「ちょ、あぶなっ!?」 まずい! 右腕が無い状態で、跳ね起きるのは難しい。 そのことを失念していたのか、水銀燈の上体は、バランスを崩して大きく泳いだ。 あわや、したたかに打ち付けそうになったところを、俺が両手でなんとか受け止めた。 「う、うぅ……」 「だ、大丈夫か水銀燈?」 「よっ、余計なお世話よぉ……。 ここは……それに、あいつらは?」 「ここは俺の家の土蔵だよ。 あいつらってのが誰だかしらないけど、そんな身体で無理するな」 俺がそう告げると、水銀燈の表情がまた変わった。 緊張の顔から、一変して恐怖の顔へと。 「身体……? ……あ、わたしの、からだ……」 水銀燈は、まるでいま気がついたかのように、自分の右腕……肘から先が存在しない腕を凝視した。 そして、背中へ首をめぐらせて……やはり無くなっている、片翼を見る。 「ない……私の翼、私の腕……。 そう、やっぱりアレは夢じゃなかったのね……」 水銀燈は、ドレスの裾をぎゅっと握り締めて、沈痛な表情で呟いた。 心なしか、その身体はかすかに震えているように見えた。 ……分かってはいたけど、やっぱりこういう水銀燈を見るのは……辛い。 「水銀燈……」 ……正直に言えば、俺は知りたかった。 彼女の身に何が起こったのか。 誰が、彼女をこんな目に遭わせたのか。 それを知ってどうするのか、なんてわからない。 ただ、水銀燈に悪意を持つ、明確な敵の存在を、知りたかった。 だが……それを語ることが出来るのは、目の前で震えている少女だけなのだ。 果たして、何があったのか、いま尋ねるべきなのか? それを迷っているうちに、沈黙は第三者によって破られた。 「水銀燈。 目が覚めたばかりで悪いのだけど、いいかしら?」 「貴女……真紅!?」 一歩前に進み出た真紅が、水銀燈を真正面から見据える。 その毅然とした態度に反応したかのように、水銀燈の顔から恐怖が拭い取られ、再び警戒心をあらわにする。 「ごきげんよう、水銀燈。 貴女がそこまで手酷くやられるなんて……正直、驚いているわ」 「何故貴女がここに居るの!?」 噛み付くような喧嘩腰で叫ぶ水銀燈に、真紅は眉をひそめる。 「何故、とはご挨拶ね。 私が居なければ、貴女は目覚めることが出来なかったのに」 「……一体、なにをしたっていうの?」 「私が、士郎に教えてあげたのよ。 薔薇乙女《ローゼンメイデン》の発条の巻き方を」 ちょ、真紅、その言い方は拙いだろ!? 案の定、水銀燈の怒りの矛先は俺の方に向かってきた。 「なんですってぇ……士郎! 貴方、よりによって真紅なんかに縋り付いたの!?」 「え、いや、俺から頼んだわけじゃ……」 「手を貸したのは私の勝手よ。 士郎はそれに応じただけ」 俺の弁明を遮って否定する。 ……流石に、くんくんに釣られてやってきました、とは言えないか。 「聞いて、水銀燈。 私の知りうる限り、アリスゲームで身体の一部を失った例は、今回が初めてよ。 今まではこんなこと、一度だって無かった。 ううん、薔薇乙女《ローゼンメイデン》の中で、こんな残酷なことが出来る子なんて居ないはずだもの。 そんな真似が出来る薔薇乙女《ローゼンメイデン》となると……ねぇ、水銀燈。 貴女がやられたのは、やっぱりあの、薔薇の眼帯の……」 「……うるさいっ!!」 「えっ?」 真紅の推理を遮ったのは、水銀燈の一喝だった。 真紅を睨み付ける水銀燈の目は、憎しみで燃え滾っていた。 「恩着せがましく言い寄ってきたと思ったら……うるさいのよ、賢しげにゴチャゴチャと! 今回が初めて? 今まで一度も無かった? だから何よ、一番最初に失敗したからって、それで水銀燈を馬鹿にしたいだけじゃない!」 「違うわ、水銀燈、私は……」 「違わないわっ!! そうやって真紅は、いつもいつも……私のことを見下してるんでしょう!? そんな貴女なんかに話すことなんか、ないわ! 今すぐここから、出て行きなさぁい!!」 ばさり、と。 久しぶりに見る、黒い羽根を大きく広げて……それが、半分でしかないことを、改めて思い知る。 その、片方だけの黒翼で、水銀燈は真紅を脅していた。 いや、これ以上ここにとどまっていたら、脅しだけじゃ済まないだろう。 それは真紅も感じ取ったのか、これ以上の長居をするのはあきらめたようだ。 「……どうやら、今日は無理のようね。 行きましょう、士郎、雛苺」 踵を返した真紅は、俺と雛苺に声をかけて、入り口へと立ち去ろうとする。 ちなみに雛苺は、入り口のところからおっかなびっくり中を覗いていた。 「え、でも……いいのか?」 「今はここに居てもなんにもならないわ。 水銀燈には、少し頭を冷やしてもらわないと。 ……だから、士郎、お茶を入れて頂戴。 そろそろお茶をするのにいい時間だわ」 そう言われて、俺は……。 α:今はそっとしておこう。真紅と雛苺と共に立ち去った。 β:一人だけにはさせられない。水銀燈とここに残る。 投票結果 α:0 β:5
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「いい、金糸雀。私も辞めるなんて翠星石達には内緒よ。 これは3人の秘密なのだわ」 橋の上でしばらく流れていくレポートを見ていた水銀燈と金糸雀に 真紅が合流したのは美術室を出てから20分後の事であった。 「どうして真紅も辞めちゃうのかしらッ?」 「そうよぉ、真紅まで辞めることないわァ」 「もうウンザリなのだわ、それより金糸雀は学校に戻りなさい。今頃は 翠星石や雛苺が騒いでるはずだから・・・それから私は停学ってこと にしておいて頂戴」 「でも、でも・・・」 「早く戻りなさい金糸雀」 何度も振り返る金糸雀を見ながら水銀燈が小声で話す。 「本当に真紅はおバカさんねぇ~。あきれちゃうわァ」 「貴女に言われたくないのだわ。それよりこれからの事を考えないと」 「そうねェ、真紅はともかく私は中退決定だからねェ~」 しばらく2人は行くあてもなくブラブラと歩きながら話す。 「はぁ~、最悪ぅ。バイトでもぉ探そうかなァ?真紅はどうするのォ? 今なら梅岡に謝れば許してもらえるんじゃァない?」 「あんなのに誤るくらいなら野垂れ死にしたほうがマシよ」 「ウフフフ、野垂れ死にィ。イイわぁ、それ。私も付き合うわぁ」 2人がこれからの不安を吹き飛ばすかのように笑っていると信号待ち をしている大型バスが目に入ってくる。 水銀燈と真紅は互いに顔を見合わせ小さくうなずく。 「あんなクソに誤るくらいならァ~、野垂れ死にねぇ」 「そうよ、でも野垂れ死にする前に勝負するのもイイのだわ」 「それ最高よォ~。私ィ、勝負事って、だァ~いスキよぉ」 信号が変わるとバスはゆっくりと発車し出す。真紅と水銀燈はバスが 見えなくなるまで目で追いかけた。そのバスには「東京行き急行バス」 と書かれていた。 そして2人は家出の計画を話し出した。ラプラスがいた街でのライブの後、 真紅と水銀燈はこの街を出る決心をつけた。 17歳の少女達の将来、未来に対する自分なりの選択。その中にはかすかな 夢や希望、目標という想いが5月の風に乗り大きく羽ばく。 その風は先ほど走りさったバスを追いかけ、そして追い越していった。 真紅、水銀燈の決意を翠星石、蒼星石、雛苺、金糸雀、薔薇水晶の5人は まだ知らない。 * 金糸雀が学校に戻ると真紅の言うとうり翠星石が他の生徒相手にケンカを始めていた。 「真紅と水銀燈の悪口を言うならこの翠星石が許さないのですぅ!」 イスを持ち上げようとする翠星石を止める蒼星石と金糸雀。 「止めるんだ翠星石!こんなことをしたらキミまで」 「暴力はイケナイのかしら~!」 「でも、でも、アイツ等が真紅と水銀燈の・・・」 「言わせておけばイイさ、真紅も水銀燈もきっと大丈夫だから」 蒼星石の言葉に金糸雀は真紅と水銀燈の事を言いそうになるのをグッと飲み込む。 (ここで真紅と水銀燈のことを言ったら大変なことになるかしら) 「水銀燈もきっと大丈夫かしらッ。それに真紅はただの停学かしら~」 「そうだよ、金糸雀の言うとうりだよ。2人ともすぐに戻ってくるよ」 蒼星石と金糸雀の言葉に翠星石は落ち着きを取り戻す。 「そうですよねッ、薔薇乙女はずっと一緒なのですぅ。そして全員で東京 に乗り込むんですぅ~」 「うん。水銀燈も泊まりに来た時に約束したし、大丈夫だよ。僕達はそろって 乗り込むんだから。それに今は来週のライブのほうが大切だよ」 「そうですぅ、忘れてたですぅ。なんてったって真紅と水銀燈復帰ライブ なのですからッ。ねっ、蒼星石、カナ、リ。あれ、金糸雀はどこですぅ?」 「あれ、今まで僕のとなりに居たのに、どこ行ったのかな?」 * 「おい金糸雀。どこ行くんだ、もう授業は始まるぞ」 そんな教師の声など聞こえない金糸雀はそのまま靴に履き替えて出て行く。 「なぁに、金糸雀。うん、うん・・・えぇ、真紅と一緒よぉ~」 「今の電話だれなの?」 「金糸雀よぉ、話があるからァ~、アンセムに来いだってさァ~」 フゥ~。水銀燈の口から煙がゆっくりとアンセムの天井に向かって行く。 「それはァ、私もイヤよ。でも私は退学なのよ、もう戻れないのよ」 「私もあんな所に戻る気はないのだわ。それに私も水銀燈と同じ退学でしょうね」 「じゃ、この先2人はどうするのかしら?翠星石達はみんなで東京に行く って希望を持ってるかしらッ!」 少し興奮気味にしゃべる金糸雀に真紅と水銀燈は先ほど決めた2人の東京に行く 想いを話すと金糸雀はテーブルに手を着き体をグイッと前に突き出し声を荒げる。 「さんざん期待や希望を持たしておいて、何の相談もなしに結局2人で学校を辞め てその場のノリで東京行きを勝手に決めたのかしらッ。そんなのズルイかしらッ!!」 「だってェ、しょうがないじゃない。私は退学よ、退学。もう私の机は無いのよぉ! 私だってみんなと一緒に行きたいわよォ!」 「私もあんな事をしてしまったからほぼ退学は決定なのだわ。ねぇ金糸雀、もう あの約束をした時とは状況が違うの、解って頂戴」 「そんな、真紅まで何を言うのかしらッ。もう、もう真紅や水銀燈なんか 知らないかしらァァ!!」 金糸雀はそれだけ言うとテーブルを叩き店を出て行く。 店を出ると涙で周りの景色が薄っすらとボヤける中を走る金糸雀。 (真紅と水銀燈なんてバカかしら、勝手に行けばいいかしらッ) (なぜ真紅と水銀燈が退学かしら、そんなのはイヤかしら~) 勝手にすればいい。離れたくない。金糸雀の胸を駆け巡る2つの矛盾した思いに 金糸雀は薔薇女子高に転校してきた当初を思い出していた。 初めて会話をしたのは水銀燈のギターを見た時だった。 まだ馴染めていないクラスの中で水銀燈だけが金糸雀と一緒に昼食を取ってくれた。 水銀燈がいない時に他の生徒から邪魔者あつかいされそうになった時、助けて くれたのが真紅と翠星石だった。音楽が、ロックが好きというだけで蒼星石、 雛苺も昔からの親友のように金糸雀を迎え入れてくれた。 その頃はまだ真紅と水銀燈の微妙な過去など知らなかったが、水銀燈がまた 真紅達と一緒にバンドを始めるのが決まった時は自分のことのように嬉しかった。 (離れるなんてイヤかしら、このままバラバラになるなんてイヤかしら) 「真紅も水銀燈も大バカかしらァァ~!!」 あふれる涙を拭うことも忘れて大声を出した後、金糸雀は泣き崩れてしまった。 * 真紅と水銀燈が久しぶりに薔薇乙女に帰ってくる。真紅、水銀燈とは 今回の音合わせが初めての薔薇水晶は内心緊張していた。 (うわ、真紅と水銀燈だぁ、愛想よくしたほうがイイのかな?) 「私・・・薔薇水晶・・・・よろしくね♡」 「同じクラスだけどバンドとしては始めてね。これからの薔薇乙女を よろしく頼むのだわ」 「これからの?」 蒼星石は少し怪訝な表情で真紅の言った言葉を口に出す。いつもの真紅なら 「これからの」とはいわない「私達の薔薇乙女」と言うはずである。 「なぁに難しい顔してるの蒼星石ィ?それより翠星石はどこに行ったのぉ?」 「あぁ、まだ金糸雀から連絡がないから電話をしに行ったよ。ホラ、ここは 携帯の電波が届かないから」 今にも雨が降り出しそうな空を見上げながら翠星石は携帯を耳に当てる。 「おバカ金糸雀、何グズグズしてるですかッ、早く来やがれですぅ」 「ちょっとカゼで熱っぽいかしら、今日は止めとくかしら・・・」 「何ぃ軟弱なこと言ってやがるですか、真紅も水銀燈も居るですのにィ」 「真紅・・水銀燈・・その2人なにか言ってないかしら?」 「別に普段どうりですぅ、停学が1週間伸びたと言ってたですよ。 何ですか金糸雀?」 「ううん、なんでもないかしら~。とにかく今日は参加できないかしら」 「金糸雀はどうしたの~、おなかでも痛いの?」 翠星石がスタジオに戻るとマイクを持った雛苺が心配そうに聞く。 「カゼを引きやがったみたいですぅ。ライブまで後5日ですのにぃ~」 「そう・・・しかたないわね。今日は私達だけでヤルのだわ」 薔薇水晶のキーボードから幻想的なメロディーが流れ出し、水銀燈のギター が追従するように入ると雛苺の高音が効いたコーラスが続く。 そこに真紅の美しくもハリのある声が切ないバラードを歌い出す。 (くぅ~、凄ぇぇのですぅ。翠星石の考えは間違ってたですぅ。やはり 真紅と水銀燈が入ると別物ですぅ、金糸雀もこれを聴いたらビビるですよッ) 翠星石の思いとは別に金糸雀はライブ前日になっても学校にすら姿を 見せなかった。 ライブを明日に控え最終的な音合わせが終わると翠星石はスタジオを 飛び出し携帯の受話器越しにツバを飛ばし怒鳴る。 「おバカ金糸雀、なにしてやがるですかッ?ライブは明日ですよッ」 「うるさいかしらッ、カナはもう薔薇乙女を止めたかしらァ!」 「な、なにを言い出しやがるですかッ、ちょっと真紅と代わるから 待っていやがれですぅ!」 「真紅と水銀燈なんか知らないかしらァ!」 そう言うと金糸雀は一方的に電話を切ってしまった。 翠星石がスタジオに戻り電話でのやり取りを説明すると真紅と水銀燈は 静かに話し出す。 「そう・・・金糸雀はそんな事ぉ、言ってるのぉ?」 「これはライブが終わるまで秘密にしておきたかった話なのだわ・・・ 私と水銀燈はライブが終わったらこの街を出るのだわ」 「なッ!真紅まで何の冗談ですぅ・・そんなのウソですよね、ねっ水銀燈?」 「真紅の言うとうりよォ、私と真紅はもう学校には戻れないわぁ。それに こんなイナカ街では何もできないわァ」 「そんな・・・じゃぁ、これからどうするですかッ?」 真紅と水銀燈はライブが終わると次の日の朝、この街を出て東京に行く 考えを告げる。そのために真紅は2日前に退学届けを出していた。 それを聞いた雛苺は涙ぐみ、薔薇水晶と翠星石は無言のままうつむいている。 そんな中で蒼星石はゆっくり話し出す。 (5)へ戻る/長編SS保管庫へ/(7)へ続く
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翠星石「きぃぃぃぃぃ!!何で、そこでキングが出てくるですか!?」 水銀燈「ふふ…切り札は最後にとっておくものよぉ…♪さ、2人とも出すもの出しなさぁい♪」 その日、水銀燈と翠星石と雛苺は、ラウンジで『賭け大貧民』をやっていた。 無論、賭けるものはお金…。そして1位が決まった時点で、後は残りの枚数で優劣が決められる仕組みとなっていた。 ちなみに、言い出したのはもちろん水銀燈…。「そのほうが面白いじゃなぁい♪それに、私から逃げるのぉ?弱虫ねぇ…♪」と言う口車に、2人はまんまと騙されたというわけだ。 雛苺「うー…1000円札さん…バイバイなのー…」 翠星石「チビチビはまだいいですぅ!!何で、翠星石は5000円なんですか!?チビ苺に負けるなんてありえないですぅ!!もう一回勝負ですぅ!!」 水銀燈「願ってもないわぁ♪いいわよぉ、お馬鹿さぁん…♪」 2人から受け取ったお金を財布にしまいながら、上機嫌で勝負に応じる水銀燈。 その一部始終を見て、ある者が後ろから声をかけた。 薔薇水晶「…銀ちゃん…。そんなところで一体何をやっているの!?」 それは、薔薇水晶がようやく学校になじみ、その姉である雪華綺晶も学校に赴任してきた頃の出来事だった。 薔薇水晶「…皆さんは教師であるにもかかわらず、こんな事をして良いと思ってるんですか!?」 不良教師3人に対し、お説教を開始する薔薇水晶。 しかし、主犯の水銀燈は頬杖をつきながら、その話を聞いていた。 薔薇水晶「銀ちゃん、聞いてるの?早く、みんなにお金を返してあげて…!」 水銀燈「やぁよ。大体、これはみんなで話し合って決めたことなのよぉ?あなたに、とやかく言われる筋合いは無いわぁ…」 薔薇水晶「だめ。それに、銀ちゃんはお金を全然大事に扱ってないじゃない…。お金は、もっと大事に使わなきゃいけないんだよ…?」 あくびをしながら話を聞く水銀燈に、薔薇水晶はさらに話を続ける。 薔薇水晶「大体、銀ちゃんはいつもお金を無駄に使いすぎだよ…!そんなことじゃ、今にお金がなくなって乞食みたいな生活をおくる羽目に…」 水銀燈「…言ったわね?」 そう言うと、水銀燈は薔薇水晶をにらみつけ、どこかへ去ってしまった。 「ちょっと待ってなさい…!」という言葉と共に… そしてそれから30分後、校舎の外からけたたましいクラクションの音がした。 何事かと外を見ると、そこにはいつもの黒のコルベットではなく、銀色の平べったい車を従えた水銀燈の姿があった。 水銀燈「どぉ…?凄いでしょう…これ…♪」 そう、それはスーパーカーの代名詞、ランボルギーニ・ディアブロ…。 以前ある男を騙して買わせたものなのだが、それは持ち主である水銀燈でさえも、乗り回すのを控えるほどの存在だった。 しかし、それを見せられた薔薇水晶は、後からやってきた雪華綺晶にこんなことを尋ねた。 薔薇水晶「姉さん…。私、車には詳しくないんだけど…あの車、そんなに凄いの?」 雪華綺晶「うん…。家が買えるぐらい…。」 その言葉に、薔薇水晶は思わず卒倒しそうになる。 そして、そんな薔薇水晶を見て、水銀燈は高笑いを浮かべてこう言った。 水銀燈「見なさい、薔薇水晶!!これがあなたと私の力の差よ!!あなたなんかじゃ、こんな車一生かかっても買えないでしょうね!!ばぁーかッ!!」 先ほど『乞食になる』と言われた事に対し、これでもかと言うぐらい薔薇水晶を罵倒する水銀燈。 しかし、彼女はまだ気がついていなかった…。 この愚行が、のちのち大変な事態を招くということに…。 だが、そんな過酷な運命を知るものはこの場に誰もおらず、今はただ、車のエンジン音と水銀燈の高笑いだけが校舎に響き渡っていた。 完 10分後(他の方が書いたやつ) 後日談
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水銀燈「…よし…。」 ある日の休日…自室で一人、覚悟を決めたようにそうつぶやくと、彼女は手に持っていた携帯電話の電源ボタンを押し続けた。 それはいつも使っているものとは違う、もう一つの電話…。 数秒後、多少ほこりのかぶったその電話は久しぶりに息を吹き返し、その本来の機能を発揮し始めた。 画面を睨み、水銀燈は中のデータを一通り確認する。 約1ヶ月ほど放置していたため、多少電池の残量が心もとないが、それ以外は問題なさそうだ。 そして適当な番号を見つけると、彼女はおもむろに電話をかけ始めた。 水銀燈「あ…久しぶり…。私だけど…覚えてる…?…そう!私よ!私!!ごめんねぇ…実は、ちょっと車で事故起こしちゃって、今まで入院してて…」 …もちろん、そんな事実など一切無い。 この日、彼女は久しぶりに『仕事』を開始した。 時折、同僚の顔や知り合いの顔が浮かびもしたが、この際そんな情に流されるわけにはいかない。 なぜなら、『ある理由』のおかげで彼女の預貯金はほとんど底をついていたのだから…。 「お金が無いのなら、真面目に仕事をすればいい」と人は言うかもしれない。 しかし、人間1度贅沢を経験してしまうと、元の慎ましい生活に戻るのには大きな覚悟を要するもの…。それに… 水銀燈「…もう、あんな暮らしをするのはうんざ…ううん、こっちの話…。ごめんなさぁい…久しぶりに声聞けて、テンパっちゃってるみたい…」 ふと頭によぎる、高校までの極貧生活…。 もう二度と、あんな思いは… そんな呪縛から、彼女は逃れることは出来なかった。 水銀燈「…それで…会いたいのは山々なんだけど、入院費とか意外にかかっちゃってぇ…。車も壊れちゃったし…もう私…どうしたら…」 多少のブランクはあったものの、その言葉はまるで魔法のように相手の心を惹きつけた。 「馬鹿な男…」と思わずほくそ笑みながら、彼女は本題を切り出す準備をし始める。 しかしその時、誰かの視線を感じ、彼女は慌ててその方向に振り返った。 そこには、その様子をにこにこと楽しそうに眺める、1人の少女の姿があった。 水銀燈「あ…ご、ごめん…今病院だから…!」 そう嘘をついて話を切り上げると、水銀燈はその少女のほうに向き直り、こう質問した。 水銀燈「…どこから聞いてたの?」 ?「んー…『でも、生死の境をさまよってた時、真っ先にあなたの顔が浮かんで…』って辺り?」 あまりの事に困惑気味の水銀燈に対し、少女は笑顔を崩すことなくそう答えた。 彼女の名前は柿崎めぐ…。以前、水銀燈とそのほかの善意の人たちの力によって心臓病を克服した少女である。 あれ以来2人の仲は急速に深まり、ついには家の合鍵を渡すまでになっていた。 むろん、それはこのめぐという少女を信頼しての事なのだが、最近ではその行為を後悔する日が多くなってきた。 もっとも、それはめぐ自身の問題ではなく、むしろ自分自身が原因なのだが… 先ほどの彼女の答えに対し、水銀燈は頭を抱えながらこう呟いた。 水銀燈「…つまり、最初の方からって事ね…。」 その言葉に、めぐは「そう。」と笑いながら答えた。 水銀燈「…で、何で勝手に入ってくるの…。チャイムくらい、鳴らしなさいよね…。」 めぐ「えー?『勝手に入ってきて構わない』って言ったの…先生じゃない♪」 その答えに、「本当に馬鹿な約束をしてしまったものだ…」と、水銀燈は思わずため息をつく。 確かに、めぐと居られる時間は楽しい…。 でも、『朱に交われば赤くなる』とはよく言ったもので、私といるせいでめぐがどんどん良くない方向へ行ってしまっている気がする…。 今日だってそう…。こんな事…万が一めぐが真似するようなことがあれば、それこそ…。 めぐ「どうしたの?何か今日…先生らしくないわ…。何かあったの?」 水銀燈「…別に。大したことじゃないわ…。」 めぐ「ふぅん…。でも、何か困ってるのなら言って。この命は先生に貰ったもの…。だから、先生のためなら何でもするわ。たとえ、それがどんなに悪いことでも、あなたのためなら私は…。」 その言葉に、水銀燈は愕然とする。 そして、彼女は少し考えた後、静かにこう言った。 水銀燈「…なら、これが最後の命令よ…。これ以上、私に近付かないで…。」 と。 めぐ「…え?」 思わぬ言葉に、めぐはそれ以上言葉を発することが出来なかった。 初めは冗談だと思った…。しかし、水銀燈の目を見る限り、どうもそうでは無いらしい…。 めぐ「ど…どうして…?チャイムも押さずに家に入ったのがいけなかったの?それとも…」 水銀燈「…うるさいわね。もううんざりなのよ…!あなたの面倒を見るのは!!私は別にあなたなんか頼りにしてない…!!むしろ、邪魔なのよ!!分かった!?」 その言葉に、めぐはしばし呆然とした。やがて自我を取り戻すと、彼女はあふれる涙を懸命にこらえながら部屋を後にした。 「…これでいい。これでいいんだ…。」と水銀燈は自分に言い聞かせる。 めぐ…これ以上、貴女のそばには居られない…。 めぐに会った日から今日まで…それは本当に楽しかった…。でも結局、私は周りの人を傷付けなければ生きていくことは出来ないようだ…。 そう、一度汚れてしまったものは、どんなにそれを直そうとしても元の白さには戻らない…。だからこそ手遅れになる前に…。 バタン、と音を立ててしまる玄関のドア。そのドアを見つめながら、彼女は静かにこう呟いた。 水銀燈「…ごめんね…めぐ…。」 決して大きな声ではないはずの声…。しかしその声は、彼女以外誰もいなくなった部屋に大きく響いていた。 真紅「…今日も柿崎さんは休みなのね…。水銀燈、何か知らない?」 それから3日後の朝…。あの日以来、めぐはずっと学校を欠席し続けていた。 原因は不明…。ならば、「彼女と親友であるはずの水銀燈なら何か知ってるのでは…?」と真紅は彼女に対しそう質問したのが、彼女は持っていた雑誌に目線を落としたまま、ぶっきらぼうにこう答えた。 水銀燈「…知らない。」 真紅「…嘘ね。本当に知らないのなら、慌てて彼女の家に向かうはず…。そうでしょう?」 その言葉に、思わず水銀燈は舌打ちをする。 全く…お馬鹿のくせに、変なところで勘が働くんだから… そんな彼女の考えをよそに、真紅は新たな疑問を彼女に投げかけた。 真紅「…一体何があったの?柿崎さんは、あなたのことを物凄く慕っていたのに…」 水銀燈「うるさいわね…。そんなこと、もうどうでもいいわ…。」 その言葉にぴくりと眉を動かすと、真紅はさっきより強い口調でこう言った。 真紅「そんな言い方ないでしょう!?あなたは、文字通りあの子の命を救った…。だからこそ、あなたを一番慕っているの…!でも、それが目の前で崩れ去った時、その行為が本人にとってどんなに辛い事か…それはあなたが一番よく分かって…」 そこまで言った時、彼女は思わず口ごもった。 なぜなら、水銀燈本人も同じような目にあっていたことを十分に知っているから…。 そして、それは彼女にとって大きな傷跡を残してしまったことを…。 しまったと思いつつ水銀燈の方を見ると、彼女はハッとした様子で真紅の顔を見つめていた。 そして数十秒後、彼女は真紅に対しこう言った。 水銀燈「…ちょっと、休憩がてら散歩してくるわね…。」 と。 …それから2時間後、彼女はめぐを連れ学校に戻ってきた。 水銀燈「…なんで学校なのよ?今なら、どこでも自由に遊びに行けたのに…」 とぼやきながら。 それをなだめながら、めぐは彼女の手を引っぱり、学校の中へと先導する。そんな2人の手は、いつまでも硬く握られていた。 完
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ボクと水銀燈が、コミケのコスプレ会場を訪れた理由は、単純にして明快。 この人混みの中から、水銀燈の親友である柿崎めぐさんを探し出し、保護するためだ。 柿崎さんは、『えーりん』とか言う謎のコスプレをしているらしいんだけど……。 どこを見渡しても、人、ヒト、ひとだらけ。 しかも、煌びやかで凝った衣装のコスプレイヤーが、ほとんどだ。 真夏の強烈な日射しに、眩しいコスチューム……なんだか目が痛くなってきたよ。 もう帰りたい。誰でもいいから、ボクを、おうちに連れ戻してよ。 つい、いままで懸命に呑み込んでいた弱音が、だらしなく口から溢れそうになった。 けれども、運命の女神は、そんな甘えさえも許してくれないらしい。 「あぁっ!?」 見つけてしまったよ。間近な人混みに佇む、赤と青のツートンカラーの後ろ姿を。 肩の丸みや腰つきからして、女の子なのは確定的に明らかだ。 およそ有り得ない白い長髪が奇妙だけど、おそらく、ウィッグだろう。 そのコスプレさん以外にも、多くの人が髪を染めたり、カラフルなウィッグを使用していたからね。 すぐ腕を伸ばせば、肩を掴める距離だと直感で悟った瞬間―― 咄嗟に、の表現がドンピシャなほど、そこからのボクの行動は反射的だった。 右手で水銀燈の服を掴んで引っぱり、左手では、柿崎さんと思しい女の子の肩を叩いていた。 我ながら、器用な真似をしたものだね。 「なにっ?!」水銀燈が、ギョッと振り返り。 「ひぁっ?!」コスプレさんも、ビクッと弾かれたように身体を震わせる。 そして、コスプレさんが振り向いて数秒―― ボクたちは仰天するあまり口を開けっ放しで、二の句を失ってしまった。 なんとか喋れるようになっても、絞り出せたのは呻き声だけ。 どうして、そんなにも驚愕したかと言えば、そのコスプレさんというのが…… 「あれ? 銀ちゃんと、蒼ちゃん……だよね?」 「そう言う貴女は、もしかしなくても薔薇水晶っ!」 水銀燈に名前を呼ばれて、薔薇水晶は、にこりと白い歯を浮かべた。 トレードマークの眼帯を外してしまうと、コスプレと相俟って、まるっきりの別人だよ。 「キミって、コスプレイヤーだったのかい?」 「そうだけど……知らなかった?」 「聞いてないわ! なんなのよ、もぅ。頭がおかしくなりそう。どうしたらいいの?」 「人生……山あり谷あり。諦めが肝心」 しれっと答える薔薇水晶。それって、あんまり答えになってないような気がする。 水銀燈は頭痛を催したらしく、額に手を当てている。いやはや、ホントに『どうしたらいいの?』と言いたい。 驚かされてばかりで、もう身もココロも疲労困憊の極致だよ。 「――あれ? でも、ちょっと待って」 ボクの中に、素朴な疑問が生まれた。 雪華綺晶は最初っから、妹の薔薇水晶に売り子を頼めばよかったんじゃないのかな? 現に、こうしてコスプレには参加してるわけだし。 その疑問をぶつけると、薔薇水晶はまたも、淡々と返してきた。 「全力で拒否った。お店番……退屈だから」 「そうだね。キミはとても賢明だよ、薔薇水晶。ボクは真相を知らなすぎた」 「私も、バカだったわ。きっぱり断っておけばよかった」 お陰で、揃いも揃って生き恥を曝す羽目になったんだからね。 顔を見合わせたボクと水銀燈は、飽きもせずに眉を曇らせ、吐息した。 すべては今更だけど、それでも。 しかし、夏日に炙られて萎れた花みたいに、悄気てばかりもいられない。 気を取り直したボクは、薔薇水晶に柿崎さん捜しを手伝ってもらえないか訊ねた。 人数が多いほうが、担当エリアを絞れる分、早期発見も期待できるからね。 ひいては、ボクの帰宅も早まるというワケだ。 「手伝っても……いいよ」 「ホントに? ありがとう、薔薇水晶」 「ただし、条件がある……ひとつだけ」 「仕方ないね、大概の無理は聞くよ。少し遅くなってもいいなら、夕飯でも奢ろうか」 ファミレスで食事するくらいなら、みっちゃんが払ってくれる約束の日当で賄えるだろう。 より以上を所望されたら、残念ながら、引き下がるしかないね。 ボクの提示した条件に、薔薇水晶は両腕で頭上に○を作る……かと思いきや、いきなり×に変えた。 「じゃあ、どうしてもらいたいの、キミは」 「儀式を執り行ってくれれば……おk」 「なにを?」 「ばらりん♪ばらりん♪助けてばらりん♪……って。こう、右腕を振りながら」 なんなのさ、そのワケの解らない狂行は! あぁ、とうとう、水銀燈が頭を抱えて蹲っちゃったよ。 ボクも水銀燈も、もう半日以上は会場にいる計算だけど、絶対、このノリには馴染めっこない。 所詮、アウトサイダーだ。ならば、もう好き好んで、ここに長居するべきじゃないだろう。 いよいよ帰りたい衝動を抑えきれなくて、ボクは自棄気味に、薔薇水晶の求めるがままにした。 薔薇水晶、会心の笑みを浮かべて、ビキィン! とサムズアップ。 「銀ちゃん……。めぐさんは、私と同じ永琳コスで……間違いない?」 「ええ、そう。それと同じデザインよ。どういう経路で手に入れたのかは、不明だけど」 言って、水銀燈は自分の服を見おろし、顔を赤らめた。 「この恥ずかしいコスチュームだって、めぐが用意したものでね」 その言を受けて、薔薇水晶の瞳が光を放った。 類は友を呼ぶ。同じ病を患う者同士、通じ合うモノがあるのかな。 薔薇水晶は、柿崎さんに仲間のニオイを嗅ぎ取ったみたいだ。 「気が合うかも。めぐさんとは……ゆっくり、お話してみたい」 ボクが水銀燈に聞いたところでは、柿崎さんは先天的な持病で、長期入院しているらしい。 そんな環境ならば、病室で退屈しのぎに、マンガ雑誌を読んだりもするだろう。 自覚のないまま、ほにゃららフリークになってることだって、充分に考えられる。 しかし、眉間に深い皺を刻んだ水銀燈が、不満そうに口を挟んだ。 「よしてよ。めぐはねぇ、音楽を聞いたり、歌っているのが大好きな娘だったのよ。 それが、急にコミケに行きたいなんて言いだして……理由を訊いても、はぐらかすし。 どうにも、腑に落ちないのよ。さては、誰かに唆されたに違いないわ!」 唆されたとは、水銀燈の勘繰りすぎじゃないのかな。 柿崎さんも、なにかの弾みでコミケに興味をそそられたのかもしれないし。 たとえば、同年代の入院患者にマンガ好きな子がいて、その子に触発された……とか。 「テレビやラジオで見聞きして……楽しそうって思ったのかも」 「薔薇水晶の意見も、充分に考えられる線だね。その可能性はないのかい、水銀燈?」 「うーん。皆無と言い切る根拠も自信も、さすがにないわねぇ。四六時中、めぐと一緒にいられるワケじゃないしぃ」 そういうこと。物事を変えるキッカケなんて、どこに転がってるか判らないもの。 なのに、勝手な思い込みで決めつけるのは、不毛な諍いの種を増やすだけだ。 水銀燈に限らず、ボクの友人たちには、そんな美しくない真似はしてほしくないものだね。 「ひとまず、原因の追求は後に回そう。柿崎さんを保護するのが先決なんでしょ」 「……そうね。いい加減、私も帰りたいしぃ」 「今日はなんだか、キミとよく気が合うね。全面的に賛同するよ」 ――と、捜索を再開しようとしたんだけど……いきなり出鼻を挫かれた。 「おーい。なにしてるのさ、薔薇水晶」 ちょっと目を離した隙に、薔薇水晶が、見ず知らずのカメラマンの前でポーズをとっていたんだ。 そりゃあね、そういう場所かもしれないよ、ここは。 薔薇水晶だって、一生懸命つくった衣装を褒めてもらえたら嬉しいだろうし。 だけど、敢えて利己的な意見を述べさせてもらえば、柿崎さん捜しに集中してほしかったよ。 「硬いこと……言いっこなし。じゃあ、次は……三人で撮ってもらうお」 「え? ちょっと貴女、なに勝手に仕切ってるワケぇ」 「ふふ~ん。銀ちゃんってば照れちゃって……かーわいいんだぁ」 「なっ、バカじゃないの! ふざけないでよ、たかが写真じゃない」 うーん。キミは乗せるのが巧いね、薔薇水晶。 それとも、水銀燈が単純すぎるのかな。すっかり撮影される気になってるよ。 まあ、いつものように勢いで押し切られちゃうボクが、彼女を揶揄できた義理じゃないけど。 その後も、タチコマという着ぐるみのコスプレイヤーさんとも、ツーショットで撮られたり。 あちらこちらでお願いされるたびに撮影してもらいつつ、柿崎さんを捜していると―― 「あっ、見て見て、あれ!」 薔薇水晶が嬉々とした声で言うので、もしや柿崎さん発見かと、目を向けてみれば…… コスプレイヤーさんには違いなかったけれど、それは身長2メートル近い、大柄な男性だった。 しかも本格的な、ヴィジュアル系バンドを彷彿させる人間離れしたメイクまで施している。 「あれなら、ボクでも知ってるよ。映画にもなったDMCでしょ」 「そそ、クラウザーさん。最高……カッコイイね」 「どこが格好いいワケぇ? どう見たって、バカそのものじゃない」 「ちょっと、水銀燈。声が大きいよ。聞こえちゃったら、どうするのさ」 「ふん! 構うもんですか。聞こえたら、どうだって言うのよ」 「あぁもう。すっかり、やさぐれモードに……」 果たして、水銀燈の嘲りが聞こえてしまったらしく。 クラウザーさんは、のしのし大股でボクたちのほうに歩いてくると、徐に―― 「レイプ(×10)! はてなようせいなどレイプしてくれるわ~~~!!」 ヒイィ、どういうコトなのさ。激しく腰をカクカクしちゃって、このヒト変だよ! もう、どう対処したらいいか判らないボクとは対照的に、水銀燈は落ち着いたもので。 冷ややかに睨んでいたかと思えば、次には、クラウザーさんの股間を蹴り上げていた。 その際に、特殊なカットのスカートが捲れあがって、その……白いのが丸見えに……。 レオタードだよね、きっと。あんまり露出の際どいコスプレは禁止だって聞いたし。 ともあれ、騒ぎになる前にフォロー入れとかなきゃ。 ボクは、股間を押さえて蹲ったクラウザーさんの脇に駆け寄り、腰の辺りをさすってあげた。 「すみません。友だちが酷いコトしちゃって」 「イテテ……あ、平気だから、心配しないでいいよ……蒼星石」 「えっ? どうして、ボクの名前を?」 こんな背の高い男の人に、知り合いなんていないハズだ。 そう言えば、前に一度だけ会った薔薇水晶のお父さんは、背が高かったけど……まさか?! 「ハト豆な顔してるな。まあ、それも無理ないけどさ、これじゃあ」 乾いた笑いを漏らすと、男性は懐からナニかを取り出し、顔に装着した。 「僕だよ、蒼星石」 「ウソッ?! キミは…………ジュン君なのかい? ホントに?」 自分の目が信じられなかった。 でも、前にいるのは紛れもなく、同級生にして学級委員のメンバー、桜田ジュン君だ。 「でも、あの……言ったら失礼だけど、キミはもっと小柄で――」 「シークレットブーツだよ。40センチくらい嵩上げしてるんだ」 「あぁ、どうりで臑が異様に長いと思った。40センチも高くしたら、もう全然シークレットじゃないよね」 「気にするな。そんなの言葉のアヤだ」 伝家の宝刀『言葉のアヤ』で両断されたんじゃあ、後の句は続けられないお約束。 言葉に詰まったボクと入れ替わりに声を発したのは、水銀燈だった。 メガネをかけたことで、彼女にも辛うじてジュン君だと判別できたらしい。 「やぁね、どこのおバカさんかと思えば。貴方までコスプレ狂だったなんて」 大仰に肩を竦めて、続ける。「まったく、今日はどういう日なのかしら」 どう考えても厄日だと思うよ。まあ、言えば皮肉になるから、黙っておくけどさ。 いい加減、瑣末なことに心を波立たせるのにも疲れていたし。 「まあまあ、水銀燈。ここで逢ったのも、なにかの縁だよ。ジュン君にも、柿崎さんを探す手伝いをしてもらおう」 「それもそうね。めぐったら、どこをほっつき歩いてるんだか」 「……なんだ、おまえら。柿崎を探してたのか?」 さらっと、ボクと水銀燈の会話に、聞き捨てならない一言が割り込んだ。 「ジュン君! キミ、柿崎さんを知ってるのかい?」 「知ってるもナニも、あいつに頼まれてコスプレ衣装を縫ったの、僕だし」 「ちょっ、なに? めぐと貴方が知り合いだったって……聞いてないわよぉ!」 「そりゃまあ、SNSで交流し始めて、まだ日が浅いからな」 SNS……mixiかな? それにしても、また意外な真相が発覚したね。 柿崎さんと水銀燈のコスチュームの出所が、こんなカタチで明確になるとは思わなかったよ。 「ひょっとして、柿崎さんにコミケのことを吹き込んだのも、ジュン君だとか?」 「なんの話だ? 僕は関係ないぞ」 「……ううん。知らないなら、いいんだ。気にしないでね。それより、柿崎さんのことだけど――」 キミは、彼女の居場所を知っているのかい? 一縷の望みに期待して訊くと、ジュン君は自信に満ちた様子で頷いた。 「もちろんだ。さっきまで一緒にいたからな。案内してやるよ、こっちだ」 思いがけず急展開。それも、いままでのフラストレーションを一掃する大逆転だ。 「めぐさんに逢えるよ……やったね銀ちゃん」 「うっ、うぅっ。ホント、よかった。これで……これで、やっと帰れるわぁ」 薔薇水晶の言葉に、水銀燈が声を震わせる。泣いちゃうほど感激しているんだね。うんうん、解る解る。 かく言うボクも、ええい、あぁ、キミからもらい泣き~。 出がけの感じだと、みっちゃんのスペースに戻った頃には、もう完売してそうだし。 これで、これで……ボクはまた一歩、家路に近づけたんだ。こんなに嬉しいことはない。 ★ 「――で、柿崎さんと合流できたんです。まったく、人騒がせな話ですよね」 心地よい達成感から、みっちゃんにコトの顛末を語って聞かせるボクの声も弾んでいた。 「再会できたときの、水銀燈の嬉しそうな怒り顔ったら……あんな顔、初めて見たな」 「一件落着ね。これでコミケを嫌いにならないでくれたら、なおよしなんだけど」 「ボクに限ってならば、それは、ないですね」 嘘ではない。貴重な体験をさせてくれたコミケという小宇宙が、少しだけ好きになっていた。 とは言っても、二度とは訪れないだろうけれど。 そう告げると、みっちゃんは世界の終わりを迎えたかのような顔をした。 「残念ね。これを機に、コスプレに目覚めてくれないかな~、なんて期待してたんだけど。 まっ、仕方ないかー。蒼星石ちゃんの気持ちを尊重すべきだものね。 あ、でも万が一にでも気が変わったら、遠慮なく連絡ちょうだいねー」 心変わりなんて、絶対にないと思う。でもまあ、それは言わないでおいた。 なにも好き好んで他者との間に壁を設けななくても、いいんだからね。 「さって、と。あらかた売り尽くしたし、そろそろ店じまいしましょー」 「もう、片づけるんですか?」 「成果は充分よ。それに、私も島巡りして、掘り出し物をゲットしたいしー。 ホントに、今日はありがとう。蒼星石ちゃんのお陰ね」 そんな風に言われると照れる。 どこまで役に立てたのかは、実際のところ疑問だけど。折角なので、素直に喜んでおいた。 「これは、ほんの御礼の気持ち。受け取ってちょうだい」 言って、みっちゃんが差し出してきた封筒は、予想外に厚めだった。 詳細は伏せておくけれど、正直、こちらが申し訳なくなってしまうほどの額だったんだ。 その晩の日記は、いろいろとネタが多すぎて、なかなか書き終わらなかった。 一生に一度きりの、貴重な一日だからね。ちゃんと書き残しておかなきゃ。 でも、家族に話す気はない。親しき仲にも、言葉にできない秘密は、あるものだからね。 以降は、これといって大きなイベントもなく―― 夏休みは猛暑と蝉時雨の中へと、穏やかに融けていった。 ★ そして、月が変わり、いよいよ始業式の日。 「それじゃあ行こうか、姉さん」 「はいですぅ。おじじー! おばばー! 行ってくるですよー」 姉さんが大声で、玄関から奥の台所に声をかける。 最近、おじいさんたちも、歳のせいで耳が遠くなり始めたからね。 それを気づかってのコトなんだろうけど。 「そんな大きな声ださなくたって、ちゃんと聞こえてると思うよ。 姉さんの声って、ただでさえ、よく通るんだもの」 「一応ですよ、一応。ささ、ちゃっちゃと登校しちまうです」 「はいはい。張り切るのはいいけど、忘れ物しないでよ?」 「へーきのへーざですぅ」 ――なんて、新学期になっても、いつもどおり仲良し姉妹のボクたち。 でも、あのコミケの一件だけは、姉さんには秘密にしている。 雪華綺晶や水銀燈、ジュン君にも、ナイショにしてくれるよう電話で頼んであった。 およそ一ヶ月ぶりの学校は、若い活気に満ちあふれている。 多くの生徒は気怠そうだけど、その肌は健康そうに日焼けしていた。 「ん? なんですかね、昇降口が騒がしいですぅ」 周囲を観察していたボクのワイシャツの背を引いて、姉さんが話しかけてきた。 見れば、確かに人だかりができている。新学期の注意とか、掲示されてるのかな? しかし、それなら各教室のHRで先生が話すなり、プリントを配ればいいだけだよね。 興味津々の姉さんに腕を引かれ、行ってみると……。 「ウソっ?!」 思わず、ボクは声をあげて、口に手を当てていた。 掲示板に貼ってあったのは、学校行事についてではなく、大判に引き延ばされた写真だった。 それも、タチコマの着ぐるみとボクとの、コスプレツーショット。 「そっ、蒼星石?! これ、蒼星石ですよね? 一体、どういうコトですぅ!」 姉さんが、よく通る声でボクの名を呼んだりするものだから、生徒たちが一斉に振り向いた。 そして、無遠慮な視線と共に、ヒソヒソと囁きを浴びせてくる。 『ああ、あの子ね。真面目そうな顔して、こんなコトしてたんだ』 『やぁだ、恥っずかしいー』 『人は見かけによらないね~』 『やっべー。エロすぎだろ、これ』 『けど、スタイルいいよなあ』 『も、ももも、んもももも萌えぇ~』 『ハァハァハァハァハァハァハァハァ……ッ!』 どうして……誰が、こんな真似を? なんで、こんなコトに……。 ああ、痛い。周りの空気が痛いよ。姉さんまで、そんな眼でボクを見ないでぇっ! 「う……やだ…………イヤだぁっ!!」 もう限界。いたたまれなくて、ボクは泣きながら学校から逃げ出した。 姉さんの引き留める声にも立ち止まらず、家まで駆け戻り、ベッドに倒れ込んだ。 ★ 「…………あ……れ?」 ――気がついたら、ボクは制服姿のまま、ベッドに横たわっていた。 なんで、こんなコトしてるんだっけ? 頭が朦朧として、よく思い出せない。 濃霧が立ちこめた森の中を、手探りで進んでいるみたいで、なんだか心許なかった。 「制服、着てる…………あ、学こ……うぅっ!」 いきなり、頭に鋭い痛みが走って、思わず顔を顰めた。 それ以上の思考を閉め出そうとするみたいに、頭痛は収まらない。 ボクは両手で頭を抱えながら、なにか違うコトを考えようとした。 「今日は……何日だっけ? えと……9……痛っ! …………8…………あれ?」 不意に、頭痛が和らいだ。8。そう。8という数字が、とても気持ちよく思えた。 「――そうか。あははっ」 その意味するところを悟ると、笑みがこみ上げてきた。「今日はまだ、8月なんだ」 いけないな。どうやら夏休みボケしてたらしい。日付を間違えてしまうだなんてね。 そうだ。折角だから、このネタを日記に残しておこう。後々の笑い話として。 足取りも軽く机に向かい、ボクは開いたページに、一行目を記した。 【ボクの夏休み。8月32日――】 この直後だった。手元の携帯電話が鳴りだしたのは。 表示された電話番号は、ボクのよく知る人物のものだった。 -4-
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このカテゴリーは薔薇乙女同士の、 百合カップリングの話を収録したカテゴリです。 「女の子同士じゃ何も生産しない!!」 とか言う人は見ないほうが賢明です 真紅×水銀燈12 雛苺×水銀燈1 真紅×雛苺1 蒼星石×薔薇水晶1 翠星石×水銀燈1 蒼星石×翠星石12345 水銀燈×薔薇水晶1234 567 水銀燈×金糸雀1 金糸雀×雛苺1 水銀燈×蒼星石1 巴×雛苺1
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準備 ◆EboujAWlRA 【準備】 「よっ……と!」 女性陣にはお引取りを願い、男五人が広い部屋の中で傷ついた身体の手当てをしていた。 Lの持っていた包帯と総合病院から探しだしたテーピングでそれぞれの肉体を固定していく。 応急処置も呼べないものだったが、それでも何もしないよりはマシだった。 外では水銀燈が翠星石が見張りをしている。 ローゼンメイデンの治療は人間のそれと異なっているし、代謝もまた同じではない。 C.C.はというと、無為に時間を過ごすぐらいならば、と身体を清めている。 その時に、C.C.は上田から白梅香を渡された。 男である上田が持つよりも、C.C.が持っていたという理屈だった。 上田はこんな状況でもどこか現実の常識に即した動きをしたがる男だった。 さて、男しか居ないこの部屋は汗の臭いが充満し、非常にむさ苦しい。 しかも、むさ苦しいだけでなくヴァンなどは全身に傷を追っているため、僅かに異臭を放っている。 さらに刺青と思わしき文様とそのどす黒い血が滲んでおり、思わず目を背けてしまうような惨状だ。 現に上田などは必死で視界にヴァンの身体を入れないようにしている。 Lの所持していた明治の傷薬を塗りたくり、ヴァンは思わず顔をしかめる。 「しっかし、すげえ身体だな」 真司は感嘆の言葉を漏らす。 惑星エンドレス・イリュージョンとロストグラウンド。 混沌の荒野で生きてきたヴァンとクーガーの肉体は隆々としたものだ。 それこそトップアスリートとなんら遜色のない肉体である。 この二人に比べると、現代日本で呑気に暮らしていた真司の肉体は若干頼りない。 同じく現代日本で過ごしていたLは意外なことに、無駄なく引き締まった肉体をしていた。 もちろん、ヴァンとクーガーに筋肉の総量自体は劣っているがそれでも中々のものだ。 最も意外だったのは上田だ。 そのまま格闘技界に参戦できるのではないかという恵まれた肉体をしていた。 それこそヴァンやクーガーと比類するほどだ。 戦闘となるとアルター使いのクーガーや改造人間であるヴァンに劣る。 だが、それでも期待させてしまう何かがあった。 もっとも、この男が刃の前に立つ時は自らの精神がよっぽど極限まで追い込まれた時だけだが。 「にっげぇ……」 五人の怪我の多くは打撲や打ち身の類だ。 そこで、五人全員が劉鳳の支給品である石田散薬をお湯と共に飲んでいた。 石田散薬とは新撰組副長の土方歳三の実家に伝わる妙薬である。 その石田散薬の適量は上田が知っていた。 物理学者でもあるが亀山歌など文学にも通じている上田は新撰組の逸話も聞き及んでいるのだ。 同時に上田は、ここは逸話通り熱燗で飲もうと提案しようとも考えたが、さすがにやめた。 アルコールが入ることはあまり良くないだろう、と自制したのだ。 「ふぅ、終わったか」 一番最初に応急処置を終えたのは、他の三人と比べて切り傷の少ないLと上田である。 幸いにも、二人の手当は身体の各部を固定し石田散薬を飲むだけで終わる程度のものだった。 「少し、足りませんかね……取りに行ってきます」 Lは肋をさすりながら立ち上がり、部屋を出ていく。 上田は、さてどうするか、と次郎人形に話しかける。 端から見ると滑稽だが、この男の陽気な性格を表している姿だった。 「なあ、山田奈緒子ってのはアンタの知り合いだろ?」 「むっ、それがどうかしたのか?」 クーガーは包帯を巻きながら、上田へと話しかける。 クーガーは先ほどの知り合い順名簿に目を通しているため、山田が上田の知り合いであることを察していた。 勉学は優秀だが、色々なところが鈍い上田はクーガーの言葉に疑問で応える。 クーガーは少しだけ迷ったが、言ったほうが上田のためだろうと判断した。 「……つかささんたちがな、その人の死体を弔ったらしい」 「……山田、を?」 その言葉に上田は呆然としたようにつぶやく。 いつも考えの隅っこに、ひっそりとその名前があった。 貧乳、ペチャパイ、未熟なマジック、奇妙な笑い声、ジャージ教師、ガ○ラの怪獣にミイラされる。 その山田が様々なワードと共に上田の頭を回り始める。 「案内を――――」 「いや」 上田は強い言葉でクーガーの言葉を断ち切る。 その目はクーガーからは見えなかった。 だが、その言葉の調子で上田がどんな目をしているかはクーガーにもわかった。 「一人で、行かせて欲しい」 上田らしくない言葉だった。 出会ったばかりのクーガーでも上田が臆病者であることは察していた。 だからこそ、それ以上は何も言わなかった。 病院の内部だし、霊安室もここからそう離れた場所ではない。 「俺もお終いだ」 「俺も、っと……」 その上田の後ろ姿を見送りながら真司とクーガーが立ち上がる。 そして、試すように身体を動かしていく。 少し動きにくい部分がないわけではないが、それでも随分と楽になった。 一方で、とにかくヴァンの治療が長引いていた。 Lの持っていた高荷恵が製造した傷薬を身体に塗りこんでいくのだが、とにかく切り傷が多い。 傷口に塗りこむわけだから、当然裸体にならなければいけない。 全身の傷口を治療するだけでも時間がかかるのに、その上で包帯とテーピングで固定する必要があった。 傷が多いヴァンの治療に時間が掛かるのは当然と言えた。 「ええっと、ヴァン……さん? それで大丈夫なのか?」 「さあな……まあ、一日ぐらいなら充分持つだろ」 帰ってから治せばいい。 真司に言葉に対して、ヴァンは簡単に言った。 この状況でヴァンだけが一点の曇りもなく脱出を信じているのだ。 シャドームーンの脅威を知りつつ立ち向かおうとするヴァン。 この男は果たして勇者なのか、それとも愚者なのか。 ただ、それがヴァンという男であることは確かだった。 「難しいことはわからないが、俺はとにかくやることがあるんだよ。 邪魔をするなら倒して、邪魔しないのならほっときゃいい」 この男の生き方は単純明快なものだった。 だからこそ、その生き方を奪われた時の怒りは常人よりも遥かに大きい。 「なあ、クーガー。その、アルターだっけ? あの脚のブーツを作ってた奴」 「ん、それがどうした?」 真司はヴァンを横目で見ながら、クーガーへと話しかける。 ずっと引っかかっていたことがあったからだ。 「いや、アルターとライダーデッキのシステムってよく似てるなぁって思ってさ」 「全部が全部、俺みたいな装着型じゃないぞ?」 「いや、その、別の世界から呼び出すんだろう?」 「そういうわけでもないが……」 真司はクーガーが話していた、【向こう側の世界】というワードを思い出す。 アルター能力は【向こう側の世界】から理屈をこっちの世界で使うことだ。 ミラーワールドに住むミラーモンスターを利用するライダーデッキとよく似ている、真司はそう思ったのだ。 「まあ、そうだなぁ……アルター能力ってのはな、自分のエゴを押し通す力なんだよ。 こっちじゃできないことを、向こうの理屈を使って押し通しちまうんだ」 「エゴ……」 「そうだ、カズマの自由も劉鳳の正義も俺の速さも、言ってみれば全部がエゴなのさ」 正義も己の速さもエゴだと。 そして、それで別に構わないとクーガーは笑いながらそう言った。 「ライダーデッキをつくった、神崎士郎って言ったか? そいつも、自分のエゴをライダーデッキの形にしたのかもな」 「エゴ、か……そうなのかもしれないな」 そう言いながら真司は机の上に広がった支給品を手に取る。 願いを叶えるために戦い合う、これがエゴでないわけがない。 「これ見て思ったんだよ」 真司が取り出したものは、ボロボロの箱に入った何枚もの紙だった。 そして、その箱の蓋を開き中から紙を取り出す。 稚拙な絵が描かれた紙だった。 「ドラグレッダー、ダークウィング、マグナギガ……ほとんどがミラーモンスターの絵だよ。 これは優衣ちゃんの描いた絵だって、一緒についてた紙に書いてある」 クレヨン描きの稚拙な絵は、確かにミラーモンスターが描かれていた。 これは園崎魅音に支給された、神崎優衣が幼少の頃に兄である神崎士郎とともに描いた絵だ。 クーガーは黙ってその絵に目を通す。 「ミラーワールドって、ひょっとすると優衣ちゃんの心のなかなのかもしれない。 それならnのフィールドっていうのと同じで鏡の中にあるのも説明がつくし」 「何が言いたいんだよ」 やはりクーガーは穏やかに笑いながら続きを促す。 真司は少し押し黙った後、覚悟を決めたように口を開いた。 「これ、神崎と優衣ちゃん以外に人間の絵が居ないんだ。 だから、優衣ちゃんの心には、人が居ないんじゃないかって……」 事実、神崎士郎と神崎優衣と思える二人組の絵しか人間は描かれていなかった。 その絵にも、ミラーモンスターが描かれている。 真司はどこか悲しい気持ちになった。 その絵が、まるで外敵から、人間から身を守るように見えたからだ。 「俺は優衣ちゃんの友達だから、優衣ちゃんも助けてあげたい。 それこそ、自由と平和を守る、仮面ライダーに」 そこまで言って、顔を俯いた。 ふと、光太郎と自分を比較してしまったのだ。 劉鳳を殺してしまった自分と、死んでもみなみの心を守った光太郎を。 「俺は、仮面ライダーになれるかな……ライダーじゃない、仮面ライダーに。 誰かのために戦えるように」 「さぁな……ま、変わろうと思わなきゃ変われないさ。 特に、強い奴に変わろうと思ったらな」 その想いが読み取ったように、クーガーは柔らかい言葉をかける。 「ただ、お前は南光太郎でも劉鳳でもない。お前はあくまで城戸真司だ」 お前はお前だと、そう言い切る。 「だから、お前は城戸真司のまま仮面ライダーを名乗ればいい」 柔らかい笑みだった。 年齢こそ真司のほうが上だが、この場に置いてはクーガーが兄貴分と呼べるような立場関係になっていた。 「餞別だ……まあ、お前が使うしかねえんだけどな」 クーガーは机から烈火のサバイブカードを引きぬいた。 仮面ライダー龍騎をサバイブ体へと変える、生存の意味を持つ究極のカード。 そのカードがクーガーから真司に手渡された。 「炎は文化の礎ってね。 人を傷つけるものだが、人を助けてきたものでもある」 炎は知恵に例えられるほど、人に無数の希望と絶望を与えてきたものだった。 そして、ギリシャ神話のプロメテウスを代表するように、多くの神話には火を与える存在が居る。 文化英雄と呼ばれる類の存在である。 ただ、その手の存在は得てして反社会的な存在とされることがある。 聖書における赤き蛇のように、存在そのものが悪と称されることも多いのだ。 この殺し合いの場に置ける、ちょうど、志々雄真実のように。 三村信史が志々雄真実に力という美酒を与えられたように。 シャナが志々雄真実に命というたった一つの権利を奪われたように。 希望と絶望を同時に与えてきたのだ。 サバイブのカードを強く握り、真司はクーガーへ尋ねる。 「クーガーも、変わろうと思ったことがあるのか? 誰かになりたいって、思ったことがあるのか?」 「いいや……どんなに不恰好でも俺は俺にしかなれねえからな。 このラディカル・グッドスピードが変わることなんてあり得ない。 まあ、それでいいんだけどな」 クーガーは未だに痛みを訴えてくる自身の脚を見つめる。 「これが、俺なんだ」 その脚を、誇りを、ゆっくりと撫でた。 「クーガー……」 真司にクーガーを止めることはできない。 眼の前の伊達男は元々後藤を追っていた。 何よりも、最速で走り続けるクーガーをこれ以上走らせないことは誰にもできない。 「死なないでくれよ」 真司は、すがるように呟いた。 ◆ ◆ ◆ 痛みを負ったペリドットを連想させる翠の髪を指で溶かしながら、湿り気の帯びた服を脱ぎ捨てる。 その裸体はスマートだが付くべきところには肉はついている。 獣欲と呼ばれる類の伏せるべき欲望を想起させるものだった。 翠星石と水銀燈の魅力は調度品のような美しさだが、C.C.の魅力はそのようなものではない。 C.C.の魅力というものは、人間としての即物的な欲求を蜂起させる魅力だった。 『人から愛されるギアス』を扱っていたC.C.は、自然とそのような身体に変化していた。 愛と欲の視線がC.C.に羞恥と見栄を生み、その姿が醜くなることを防いだのだ。 「……ルルーシュ」 ゼロの仮面を指で柔らかくなぞり、目を閉じる。 裸体だが、そこにはいやらしさよりも母性があった。 我が子を抱きしめるような、安らかな空気が広がる。 「お前は、嘘のない世界を否定するか?」 嘘がなければいいと思っているのはV.V.たちだけではない。 C.C.だって嘘がなければいいと思っている。 騙されるということは、あまりにも心を傷つけるものだから。 『ざぁんねんでしたぁ! 貴女騙されちゃったの!』 それは辛すぎるものだ。 辛い思い出を消すように、白梅香の香りを身体に吹きかけた。 「考えてもしょうがない」 ゼロの仮面を手放し、変わりに黒の騎士団の女性用制服を身にまとう。 シェリス・アジャーニのHOLY制服ではなく、黒を基調としたその制服を選んだのは単なる感慨からだ。 押し付けられた秩序を打開するべき混沌の制服。 この場にはふさわしいものだと思ったから、C.C.を選んだだけだ。 元々着ていた衣装を脱ぎ捨ててほっぽり出し、その部屋から扉を開ける。 「……ん、Lじゃないか」 扉を開いて周囲を見渡すと、廊下の奥から現れたLの背中が見えた。 相変わらず猫背のままゆったりとした足取りで歩いている。 その手には病院から調達したであろう道具を持っていた。 「おや、C.C.さん。服を着替えたんですか」 C.C.の言葉にLは振り返る。 そういうLの服はすっかり汚れていた。 元々が白い服であるだけに、その汚れは顕著だ。 C.C.はゆっくりとした歩調でLへと近づいていく。 「なんだ、それは?」 「ヴァンさんに渡すテーピングと、空のカプセルを少し拝借してきましただけです。 カプセルには支給されていた青酸カリを入れておこうと思いまして。 幾つか被せると、時間差の効果も出ますから」 「……物騒だな」 「使えるようにしておきたいだけです。何が起こるのか、何が役立つかわかりませんから」 毒を扱っている割に毒気のない顔でLは応える。 冷徹とは強張った顔をしていることではなく、感情のない表情を浮かべることなのかもしれない。 C.C.はゼロの仮面を撫でながら尋ねた。 「先ほどの話、長々としていた割りにはなにもわからないことだったな」 「そうですね、あまり収穫はありませんでした。 なにかわかってしまえば良かったのですが」 「……やらないほうが、良かったかもしれないな。 城戸辺りは考えこむ性質だろう、悪戯に警戒心を高めただけだ」 V.V.の腹を突くのは、正直いい気分ではなかった。 Lたちにとっては単なる悪人だが、C.C.にとっては旧知の仲だ。 仲違いしたとはいえ、己の死のために彼と接触した事実に変わりはない。 そんなC.C.の言葉にLはゆっくりと首を振った。 Lとしてはあの会話が無駄だとは思っていなかった。 「C.C.さん。大事なのは信じる信じないは関係なく、とにかく疑ってかかることです」 「……なに?」 C.C.は疑問の言葉を投げかける。 嘘のない世界とは、全く別の考え方だった。 「疑いたくなくても、徹底的に疑う。 真実とはそう言った痛みの上でしか見つかりません。 疑いを失くした正義が傲慢であるように、疑いを失くした信頼ははっきり言って意味がありません。 どんなに信じていても、疑わなくてはいけないのです。 それも一種の信頼なのですから」 Lの頭によぎっているのは夜神総一郎の姿だった。 息子を信じた上でLに疑わせた。 総一朗は疑うことが真実に近づく道であることを知っていたのだ。 「絶対に間違っている、あるいは、絶対に間違っていない。 真実を求めるためには、どんなに確信していてもその確信を疑う必要があります。 そもそもとして、誰かが別の誰かを傷つけないために嘘を言っているのかもしれませんから。 それは優しさですが、優しさもまた人を窮地に追い込みかねない。 だから、私のように真相を追求する人間は常に疑わなくてはいけない」 「……」 C.C.は言葉を返さないが、Lはそのまま言葉を投げかけていく。 C.C.の胸の内に抱えている疑問を解きほぐすように、言葉を投げかけるのだ。 「この先、強くなければいけません。強くなってもらう必要があるんです。 V.V.の裏に誰が居ても、どんな強大な壁があっても、戦い続けるために。 このどうしようもない現実を生き抜くために、強くなければ全員が死んでしまう」 「……L。そんな言葉はお前が強いから言えることだ」 その言葉を、思わず否定してしまった。 いや、否定と言うよりは、拗ねるような色が濃いだろう。 「誰も彼もが、お前のように強いわけじゃない。 弱くなければ、生きていけない人間も居る」 己のために世界を変えることは自らのために他人を傷つけるような弱い行為かもしれない。 だから、シャルルやV.V.やマリアンヌを弱い人間だと蔑むことは簡単だった。 だが、C.C.にはそれが出来ない。 自分が強いなどとは、口が裂けても言えなかった。 ◆ ◆ ◆ 「……」 「……」 二体の人形の間は沈黙が支配していた。 翠星石は盗み見るように水銀燈へと視線を移す。 病院と言えど人形師の居ない現状で左脚はどうにも出来ず、いまだ欠損部分を無様に晒している。 沈黙に耐え切れず、翠星石が水銀燈へと語りかける。 「蒼星石襲ったらしいじゃねえですか。 こんな時になにを……」 「私たちのアリスゲームが終わったわけじゃないわ。 自分の他にローゼンメイデンが残っている限り、終わらないんですもの。 だったら、襲うほうがよっぽど自然じゃない」 そういう割に水銀燈は暗い表情のままだった。 水銀燈の言葉が正しければ、今も翠星石に襲いかかるべきなのだ。 倒さなければいけない姉妹を前にしても、水銀燈の心の奥には恐怖という鎖が巻き付いているのだ。 「アンタのローザミスティカ渡しなさいよ」 「嫌ですぅ」 そんな挑発の言葉ですら、張りがない。 自然と翠星石の、嫌だ、という否定の言葉も勢いのないものになってしまう。 「……水銀燈と話す機会なんて、思えばそんなになかったですね」 「そんなもの必要ないでしょう?」 「必要ないわけないですぅ」 「必要ないわよ……」 「むぅ……」 不自然にも思えるほど、話題を切り替える。 だが、その言葉にも水銀燈は素っ気ない言葉しか返してこない。 口を尖らして翠星石も答えるが、そこで会話が途切れる。 「……」 「……」 お互い気の強く喧嘩腰になりがちな水銀燈と翠星石だ。 いつもならば売り言葉に買い言葉となり、このような沈黙はめったに存在しなかった。 だが、この場を支配するのは沈黙だけ。 いたたまれない沈黙と、決して歩み寄れない稚拙な口喧嘩。 果たしてその二つならばどちらが良いのだろうか。 「……そろそろ言うけど、貴女も感じたはずよ」 水銀燈は意を決したように、触れてはいけない話題にゆっくりと触れる。 翠星石もピクリと身体を震わせた。 水銀燈の語調で、何を言おうとしたか察したのだ。 「あれは、あの『光』は、私たちも知らないものだったわ。 でも、私たちのよく知っているものと似すぎている」 ――――それは、天を照らす緑色の光。 ――――それは、地を統べる人外の証。 ――――それは、人を滅ぼす王者の石。 ――――その名を、キングストーンと言った。 「ローザミスティカのそれを遥かに上回る、けれどよく似た輝き……」 世紀王の戦いとアリス・ゲームは酷似している。 己を己とする石(ローザミスティカ、あるいはキングストーン)を奪い合い、 複数(ローゼンメインデン、あるいは世紀王)の中から一人だけ特別な存在(アリス、あるいは創世王)を作り上げる。 「……あの光について、お父様はなにか知っているかもしれない。 あるいは、お父様もアレを探してるのかも。あの、異常な光を」 リプラスフォームをまとわない正真正銘のバッタ怪人である仮面ライダーBlackの世界。 そこでキングストーンは賢者の石と呼ばれた。 錬金術師ローゼンがつくりあげたローザミスティカもまた、賢者の石だ。 キングストーンがゴルゴムの賢者の石ならば、ローザミスティカは人類の賢者の石なのだ。 そして、賢者の石とは、卑金属を金に変え、その生命を永遠のものへと変える。 すなわち、錬金術にとって達成すべき『究極の叡智』を指す言葉だ。 キングストーンがゴルゴムにとっての究極であることは言うまでもない。 ローゼンメイデンである彼女たちは、その事実を本能的に理解していた。 キングストーンが強力な力の塊であると、人形である自分たちを完璧な少女に進化させる力があると。 愛と本能が彼女たちに訴えていた。 「あれが、あればわた、し、も――――」 シャドームーンに勝てる、そう考えた瞬間だった。 体全体が震え出す。 眼球は揺れ、嘔吐を呼び戻すような嫌悪感が水銀燈の意思を塗りつぶす。 目に浮かぶのは銀色。 自身の銀髪などよりも冷たい、銀色の鎧が浮かぶ。 緑の複眼に見つめられている。 あの光が、キングストーンという強大な力の塊がシャドームーンのものだとわかってしまった。 今、時空を超えて、睨みつけられている。 「ァ、ア、アァァァアァ!!?」 「な、なんですぅ!?」 突然震えだした水銀燈に対して翠星石は話しかけるが、水銀燈は身体を小さくさせるばかりだ。 当然だ。 王の眼前でなければ、いくらでも元の自分の皮を被ることは許される。 だが、それだけだ。 どれほど装ってみても、水銀燈の魂には恐怖という影がある。 それはどれほど拭っても消えてくれない呪いだ。 水銀燈は既に心が敗北している。 どれだけ元の自分を演じていても、本質的にはすでに水銀燈は水銀燈ではない。 誇り高きローゼンメイデンは、死んでしまっている。 シャドームーンに勝とうと夢想する心すら、許してはくれなかった。 「ハァ、ハァ……ア、アァアア……」 「……大丈夫ですよ」 未だに震える水銀燈に対して、その細い腕を回して抱きしめる。 「まったく頼りねえ姉ですぅ」 「な、なによ!」 敵対心を水星期にぶつけるように叫び立てる。 だが、翠星石はぎゅっと水銀燈の身体を抱きしめる。 「翠星石……貴女、私のこと嫌いじゃないの……なんで、貶さないのよ。 ローゼンメイデンにふさわしくない、みじめな姿を……!」 「嫌いなんかじゃないですし、馬鹿になんかしねえです」 震える身体から翠星石のぬくもりが伝わってくる。 それに甘えたくなる自分が、水銀燈には何よりも耐え難かった。 それでも抜け出す気迫すらない。 「たった七人の姉妹、どうして嫌いになれるですか」 「…………ッ!」 哀れみに似た言葉は優しすぎる。 七体のローゼンメイデンの中で水銀燈が一番知っている。 みじめな人形であれば、誰もが優しくしてくれる。 それでも、その優しさがひどく暖かった。 震えは、治まっていた。 「ねえ、翠星石……」 「なんです?」 震えの治まった水銀燈が、翠星石へと尋ねる。 だが、ただその名前を呼びたくなっただけで明確な話題があったわけではない。 水銀燈は手探りで言葉を探す。 「……貴女、真紅のローザミスティカ持ってるわね」 口に出たのはローゼンメイデン第五ドール真紅のことだった。 水銀燈が最初に出会った、水銀燈が初めて憎しみを抱いた因縁深いローゼンメイデン。 「それ、渡しなさいよ」 「それはダメです」 水銀燈の言葉に対して翠星石は、嫌、ではなく、駄目だ、と答えた。 「ローザミスティカは私たちの魂。 その真紅の魂が私を選んでくれたんです、簡単に渡すわけにはいかねえです」 その言葉で思い出すのは始まりの記憶。 水銀燈がローゼンメイデンとなった瞬間の時間だ。 「真紅の魂が水銀燈に行きたいと思ったのなら、喜んで水銀燈にやるですよ」 「……翠星石、貴女ったら本当にお馬鹿さんね」 記憶の隅に閉じ込められた、優しさと恥辱に溢れた甘々しくも苦々しい記憶。 それが蘇る。 だからこそ水銀燈は怒りを半分、悲しみ半分で小さく呟いた。 「真紅が私と一緒に居たい、だなんて……そんなこと、思うはずがないじゃない」 ◆ ◆ ◆ 「山田……」 霊安室の中に眠る山田奈緒子のその姿に、上田は呆然としながら声を投げかけた。 いくつか怪我をしていることが見て取れた。 半壊した病院に巻き込まれたのだろう。 覚えていても辛いことだから考えないようしていた。 だが、忘れようとしても、心のどこかにその姿があった。 上田はしばしの間、奈緒子の遺体をじっと見ていると、突然声を弾ませた。 霊安室には不釣り合いな、陽気な声だった。 「どうした、今度は復活マジックか? 心停止と皮膚の温度低下とは中々手が込んでるじゃないか、V.V.も騙されているようだ。 だが、やはりYOUは甘いな。私にはそれがマジックだとわかっている。 なにせ私は超優秀な日本科技大教授上田次郎、それに君とは長い付き合いだからな」 奈緒子は何も言わない。 霊安室の中には上田の呑気を装った声だけが響き渡る。 再び沈黙が場を支配すると、上田はふぅと息をつきながら肩を落とした。 そして、メガネを外し隠すようにして顔面を大きな手のひらで覆った。 「……君は本当に死んでしまったのだな」 超常の奇跡にすがる想いを抱いた人間はこんな想いだったのかもしれない。 奇跡とは存在しないからこそ求め続けるものだ。 本来は心のどこかで諦めていたものが手に入るということは、あまりにも甘い誘惑だ。 だが、上田次郎はその甘い誘惑を跳ねのける。 それは上田次郎と山田奈緒子が共通する思いがあるからだ。 「この世に超常現象は存在しない……それが私と君の考えだった」 すっかり冷たくなった手をにぎる。 夜闇の暗さも手伝い、底冷えのするような感覚が上田を襲う。 それでも、その手を握りしめた。 「安心しろ、この会場で起きていることは全て私が解決してやる。 ここには多くの魔法のような出来事がある。 だがな、Lの推理や城戸くんたちの話を聞く限りだとそれは理論を持った技術なのだよ。 彼らの世界……馬鹿らしいが、それ以外に思いつく言葉がないんだ。 とにかく、その世界ではその現象は確かに観測されてしっかりと研究されているらしい。 アルター能力も、ギアスとやらも、ライダーデッキとやらもな。 それはつまり、超常現象などではないことを意味しているんだよ。 どのような不可解な事象も観測されてその理論が研究されればな、そいつは科学になる。 理屈を解明して、この人類の宝である優秀な私が超常現象を科学に変えてみせる」 ただ、上田がその現象を知らないだけなのだ。 理屈はどこかにある。 超常現象とは観測できても解明できないことを意味する。 解明できた瞬間に、それは魔法から科学へと名前を変えるのだ。 「人が蘇るというのならば……その理屈を私が解明してみせる。 言ってしまえば、魔法科学か? とにかくな、人間はそうやって発展してきたんだ。 奇跡のような出来事も、科学という学問によって解明してきたんだよ。 私はV.V.の言う超常現象には乗っかからない、奇跡ならば私の手で掴みとってみせる」 奈緒子はなにも言わない。 当然だ、上田の理論にも死人がしゃべりだすということはあり得ない。 喋り出した時点でそれは生命活動を行なっているということであり、つまりそれは死人ではなくなるのだから。 そして、奈緒子は確かに死人なのだ。 「……だから、君はゆっくりと休むといい。 ここには私と君の知らないことが多くあるが、それでも理屈を無視した超常現象はない。 イカサマ超常現象があったなら、私が一人でそのイカサマを暴いてやる。 そして、この私が君の代わりにその詐欺師に言ってやるさ。 『お前のやっていることは、なにもかもお見通しだ!』ってな」 そう言って、再び奈緒子の手を握る。 人の手とは思えない冷えた手を数分も握り続けると、上田は顔を上げた。 目元が潤んでいる。 上田は涙が零れないように天井を見上げながら、霊安室の扉に手をかける。 だが、そのドアノブをひねることはしない。 振り返り、視線を奈緒子へと戻す。 ――――私は、君のことが…… それでも、己自身も判断できない曖昧な胸中を口にすることはなかった。 【一日目真夜中/G-8 総合病院】 【ストレイト・クーガー@スクライド】 [装備]:葛西のサングラス@ひぐらしのなく頃に、 [所持品]:基本支給品一式、城戸真司のズーマーデラックス@仮面ライダー龍騎 [状態]:身体中に鈍い痛み、両脚に激痛、疲労(大)、応急処置 [思考・行動] 1:後藤を最速で倒す。約束は守る。 2:北岡、ジェレミア、つかさ、レナを探す。 ※総合病院にて情報交換をしました。 ※ギアスとコードについて情報を得ました。 ※真司、C.C.らと情報交換をしました。 【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】 [装備]庭師の如雨露@ローゼンメイデン、真紅と蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン [支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0~1) [状態]身体中に強い鈍痛、疲労(中)、首輪解除済み [思考・行動] 1:真司と同行し、殺し合いを止める。 2:真紅が最後に護り抜いた人間に会い、彼女の遺志を聞く。 [備考] ※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。 ※真紅のローザミスティカを取り込んだことで、薔薇の花弁を繰り出す能力を会得しました。 【城戸真司@仮面ライダー龍騎(実写)】 [装備]龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎 [所持品]支給品一式×4(朝食分と水を一本消費)、確認済み支給品(0~2) 、劉鳳の不明支給品(0~2)、発信機の受信機@DEATH NOTE 首輪(剣心)、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎 [状態]身体中に激しい鈍痛、疲労(大)、劉鳳を殺してしまったことに対する深い罪悪感、志々雄への嫌悪、応急処置 [思考・行動] 1:人を守る。 2:右京の言葉に強い共感。 3:翠星石と同行し、殺し合いを止める。 ※絶影を会得しました、使用条件などは後の書き手の方にお任せします。 ※クーガー、C.C.らと情報交換をしました。 【ヴァン@ガン×ソード】 [装備]:薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK [所持品]:支給品一式、調味料一式@ガン×ソード、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎 [状態]:疲労(小)、右肩に銃創、右上腕部に刀傷、各部に裂傷、全身打撲、応急処置 [思考・行動] 0:とりあえず前に進む。 1:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。 2:C.C.の護衛をする。 3:次にシャドームーンに会ったらバトルホッパーを返す。 [備考] ※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。 ※C.C.の名前を覚えました。 【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ R2】 [装備]:ファサリナの三節棍@ガン×ソード、黒の騎士団の制服@コードギアス 反逆のルルーシュ [所持品]:支給品一式×4、エアドロップ×2@ヴィオラートのアトリエ、ゼロの仮面@コードギアス ピザ@コードギアス 反逆のルルーシュ R2、カギ爪@ガン×ソード レイ・ラングレンの中の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、白梅香@-明治剣客浪漫譚- 確認済み支給品(0~1)、 [状態]:健康、首輪解除済み [思考・行動] 0:レナと合流したい。 1:利用出来る者は利用するが、積極的に殺し合いに乗るつもりはない。 2:後藤、シャドームーン、縁、スザク、浅倉は警戒する。 3:ジェレミアの事が気になる。 [備考] ※不死でなくなっていることに気付いていませんが、回復が遅い事に違和感を覚えています。 ※右京、ルパンと情報交換をしました。 ※クーガー、真司らと情報交換をしました。 【L@デスノート(漫画)】 [装備]ゼロの剣@コードギアス、 [支給品]支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ 角砂糖@デスノート、情報が記されたメモ、S&W M10(5/6)、S&W M10の弾薬(18/24)@バトル・ロワイアル、 首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に 女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、才人の不明支給品(0~1) [状態]肋骨折、疲労(小) [思考・行動] 1:協力者を集めてこの殺し合いを止め、V.V.を逮捕する。 2:シャドームーンを倒す 3:大量の死者を出してしまったことに対する深い罪悪感。 [備考] ※詳細名簿に追加された情報は連れて来られた時系列以外未定です、次の方にお任せします。 ※水銀燈が話したのは夜神月に会ってからの話だけです。 【上田次郎@TRICK(実写)】 [装備]君島の車@スクライド、ベレッタM92F(10/15)@バトルロワイアル(小説) [支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、上田次郎人形@TRICK 雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、 浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(1~3)、銭型の不明支給品(0~1) [状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲 [思考・行動] 0:山田…… 1:Lに協力する。 2:シャドームーンを倒す……? ※東條が一度死んだことを信用していませんが、Lが同じ事を言うのでちょっと揺らいでます。 【水銀燈@ローゼンメイデン(アニメ)】 [装備]ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン [支給品]支給品一式×6(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、 首輪×2(咲世子、劉鳳)、着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、 農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、 カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0~1)、ロロの不明支給品(0~1) 三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル [状態]睡眠中、疲労極大、右目にヒビ割れ、右眼周辺に傷、左脚欠損、強い恐怖 [思考・行動] 1:シャドームーンを倒すまではLに協力する。 2:キングストーンに興味。 3:出来る事ならば、優勝を目指す。 [備考] ※ゾルダの正体を北岡という人物だと思っています。 ※nのフィールドに入ろうとすると「入ろうとする意思そのものが消されてしまう」ようです。 ※Lが話したのは彼が知っている危険人物についての情報だけです。 ※高荷恵の傷薬、石田散薬、包帯はすべて消費しました。 ※残った不明支給品は八人全員が確認しました。 ※シアン化カリウム@バトルロワイアルは複数個のカプセルに入れ替えました。 ※知り合い順名簿の順番は【真・女神転生if…】が【ヴィオラートのアトリエ】の前に来ています。 【石田散薬@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚】 劉鳳に支給。 新撰組副長である土方歳三の実家が製造、販売していた傷薬。 多摩の浪人であった時代に土方歳三が剣術修行のついでに売り歩いた代物。 打ち身、骨折によく効き、熱燗の日本酒で飲むことが推奨されていた。 るろうに剣心本編では斎藤一が薬売りに化けて神谷道場に訪れた際に登場した。 【白梅香@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚】 北条沙都子に支給。 雪代縁の姉である雪代巴が愛用していた香水。 【神崎優衣の描いた絵@仮面ライダー龍騎】 園崎魅音に支給。 幼少の頃に神崎優衣が描いた絵が箱詰めされてある。 怪獣の姿は全てがミラーモンスターである。 【サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎】 ストレイト・クーガーに支給。 これを使用することで、仮面ライダー龍騎が仮面ライダー龍騎サバイブへと進化する。 なお設定上はリュウガもこのカードを使用することでサバイブ体になれる。 時系列順で読む Back 推測 Next Re:寄り添い生きる獣たち 投下順で読む Back 推測 Next Re:寄り添い生きる獣たち 156 推測 ヴァン 157 Re:寄り添い生きる獣たち C.C. 城戸真司 翠星石 ストレイト・クーガー 上田次郎 L 水銀燈